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「反麻生」48人リスト

2008年12月15日 AERA
沈没寸前の麻生丸から、生き残りをかけて自民党議員が動きはじめた。余裕で勝てるか、
何かしないと確実に負けるか――「強者弱者連合」が、政局をにらんで揺さぶりをかける。
編集部 福井洋平
 ドアの外まで大声が響いた。
「提言を執行部にのませるのか。のまないなら(野党が出す)内閣不信任案賛成までやるのか」
 9日に自民党で開かれた「速やかな政策実現を求める有志議員の会(速やか議連)」で、その日初参加だった柴山昌彦衆院議員はそう発言した。参加者の反応はなかった。
 11月21日に2次補正予算の早期国会提出を内閣に求め、「反麻生勢力」の旗頭と見なされるようになった速やか議連。当初24人の会員はこの日、48人にふくれあがっていた(出席は25人)。
 この日のテーマは、次の行動や政策提言を何にするか。年金、道路特定財源、議員報酬――議員たちが自分の関心を披露しあう中、柴山議員の発言は「政局より政策」という会の建前をKYぎみに崩してみせたわけだ。
 中心メンバーは言う。
「麻生さんが提案に耳を傾けず、我々を造反扱いして選挙で公認しないなんてことになると、大変なことになりますよ」
 呼びかけ人である塩崎恭久元官房長官は会合後、「(野党の内閣不信任案に賛成するかどうか)筋論から言うと難しい」とはぐらかしたが、「17人という数字は意識しているのか」と問われるとニヤッと笑顔を見せた。

あのときも勉強会乱立

 48人全員が仮に不信任案に票を投じても可決はされない。ただし、うち17人が造反すれば、参院で否決された法案を衆院3分の2以上の賛成で再可決できなくすることが可能だ。麻生政権は国会運営に行き詰まり、解散・総選挙となる。
 柴山議員は発言の趣旨を、「不信任の覚悟もないのに、下手な行動はしないほうがいいということです」と説明するが、「塩崎さんが変に反応したから話が大きくなってしまった」(議連参加者)。
 当初は純粋な政策勉強会だったが、「数」は政局を動かすには十分なところまできている。ダッチロールの止まらない麻生政権からなんとか逃げだそうという自民党議員の思惑は、速やか議連の人数急増のほか、勉強会の乱立という形で表れてきた。
 9日には小泉、安倍両元首相も参加する「郵政民営化を堅持し推進する集い」に60人が出席。11日に発足した「生活安心保障勉強会」は中川秀直元幹事長が会長をつとめ、約60人が出席した。勉強会が乱立する状況を、ジャーナリストの上杉隆さんは「自民党が下野した1993年前夜を思い出す」と語る。

盟友たちまで麻生離れ

 とにかく、麻生政権の求心力低下は当時以上に深刻だ。自民党税調は首相が希望していたたばこ増税を見送る方針を決め、中川昭一財務相は国会審議のため、党税調に説明にも行かなかった。首相が求めていた消費税値上げ時期(3年後)の与党税制改正大綱への明記も実現しなかった。盟友の鳩山邦夫総務相も麻生離れが顕著だ。
「周りに『あんなバカとは思わなかったよ』と愚痴をもらすほどです」(上杉さん)
 盟友ですらこう。中堅、若手の不満はもはや抑えられない。
「政府の中小企業への資金供給策は、十分とは思えない。もっと思い切った姿勢をとってほしい」(山内康一衆院議員)
「道路特定財源の一般財源化を骨抜きにする今の政府案は福田政権時に閣議決定した路線をひっくり返すもの。もし、こういう法案が提出されたら、賛否も考えないといけない」(水野賢一衆院議員)
「麻生政権を支えるつもりだが、政権が浮揚するためには年明け早々にも閣僚、三役をベテランから中堅中心に改造すべきだ」(後藤田正純衆院議員)
 とはいえ、即、政局とはいかないようだ。仮に、自民党を飛び出して、解散総選挙に追いこんでも、小選挙区制度で、小政党が戦うのは困難だ。
 政治アナリストの伊藤惇夫さんはこう語る。「選挙に強い人と弱い人が群れて強者弱者連合を作っているのが、今の勉強会。『速やか議連』に入っている渡辺喜美元行革担当相が強気な発言を繰り返しているのは、彼が選挙に強いからです」。
 8日の自身のパーティーで新党のシナリオまで披露し、倒閣への意欲を見せる渡辺議員は、父・美智雄元副総理の代からの強固な地盤を誇る。

勉強会を「免罪符」に

 一方で、同じく二世ながら民主党が地元の人気キャスターを対抗馬にぶつけてきた塩崎議員は、苦戦が伝えられている。ましてや、小泉チルドレンの83人は70人が落ちるとまで言われ、生き残りの道は限りなく細い。
 政権目前の民主党が分裂する可能性はゼロに等しく、政界再編が選挙前にあるとは考えにくい。民主党はすでに公認、推薦あわせて300選挙区中245選挙区に候補を用意しており、民主党へのくら替えも難しい。
 ある中堅議員がつぶやく。
「私たちは、民主党に片思いするしかないんですよ」
 政界再編も、民主党へのくら替えという手もない。選挙が危ない自民党議員にとって勉強会は「自分は麻生とは違うんだ」という免罪符、せめてもの生き残り策なのかもしれない。
「こういう時はね、動かないほうがいいんだよ」
 天才的な政局観で長期政権を築いた小泉元首相は、周囲にそう自制を呼びかけているというが、未曽有の危機が、自民党議員を大きく揺さぶっている。
※各媒体に掲載された記事を原文のまま掲載しています。

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