毎年流行するインフルエンザだが、その原因ウイルスは鳥が感染していたウイルスが豚などを通して、人に感染しやすいタイプに変化したと言われている。この歴史から、私たちが学ぶことができるのは、他の生き物が持っているウイルスが変化して人に感染しやすくなるということだ。
現在、最も新型になる可能性が高いのは、専門家がH5N1と表記するウイルスだ。強毒性で感染した鳥はすべて死んでおり、人の致死率も63%。15カ国で387人に感染し、245人が死亡した(9月10日現在)。世界保健機関は人から人に感染する大流行を懸念し、各国に同型ウイルスが検出された場合の通報義務を課している。
だが、H5型の警戒だけでは不十分だ。けいゆう病院(横浜市)の菅谷憲夫医師によると、アジアを中心にH9N2が鳥の間で広く分布している。欧米ではH7N7が鶏で発生し、獣医師ら84人が感染し、うち1人が死亡した。菅谷さんは「H5N1は香港での発生から10年、人への感染から5年以上が経過した。まだ新型にならないのは変異しないタイプかもしれない」と他のタイプも警戒が必要と訴える。
また、1918年のスペインかぜ(H1N1)の前にA香港型(H3N2)が流行したとの記録がある。いずれも現在の季節性インフルエンザウイルスだ。これ以外にH2N2が57年にアジアで流行した。国立感染症研究所の西條政幸主任研究官は「H1~3型が流行を繰り返すとすれば、次の脅威は人類が免疫を失いつつあるH2N2ではないか。ただ、H5を想定した対策は危機管理を強化する意味で必要」と話す。【関東晋慈】
毎日新聞 2008年12月16日 東京朝刊
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