周産期医療体制の不備が大きな社会問題となっていることに鑑み、文科省は大学病院における周産期医療体制等の現状について調査を行い、その結果を発表した。
現在、NICU(Neonatal Intensive Care Unit=新生児集中治療室)が整備されていない国立大学病院は、弘前、山形、千葉、東京医科歯科、福井、山梨、岐阜、長崎の9大学病院で、整備率は全国立大学病院42病院のうち33病院78%に止まっている。これは、公立大学病院100%、私立大学病院93%に大きく劣っている。また、病床数も公立・私立より低水準で、国立平均は7.4床に止まる。MFICU(母体・胎児集中治療管理室)の整備状況となると、全42病院のうちわずか8病院、整備率は19%という低い水準で、病床数平均も5.3床でしかない。こうした事態を受け文科省では、周産期医療体制を充実させるため、来年度からの4年間で全ての国立大学病院にNICU(新生児集中治療室)を整備し、半数の病院でNICUなどの病床を20床に増やす考えを示した。
周産期医療に対する大学病院からの意見聴取の結果、「産科医、新生児医、麻酔科医及び周産期医療に従事するスタッフ(助産師、看護師など)が不足」「低出生体重児の増加等に伴い、NICU病床が不足」「「総合周産期母子医療センターでは、通常分娩を行わないなど役割分担が必要」「周産期医療に従事する医師、助産師、看護師等の人材養成教育システムに対する財政支援が必要」「施設整備に対する財政的支援」「診療報酬上の適切な評価」など、現場からの切実な声が届いている。
NICU未整備の国立大学病院が9病院に上るとは、国による周産期医療の体制整備があまりにも遅きに失したのではないか。ちなみに、神奈川県全体でNICUを有する病院は16病院、合計149床、1病院あたり平均9.3床である。県内唯一のこども専門病院である県立こども医療センターが、この10月から、NICUをこれまでの16床から21床に増床した。毎年300人を超す新生児をNICUで受け入れてきたが、年々増加する低出生体重児、長期入院等に対処するための整備である。
しかし一方で、NICUさえ増やせば良いわけではない。NICUでの医療には、高度の専門性が必要となってくる。病床の整備に止まらず、新生児科医の育成や確保をしっかりと行わなければならないことは言うまでもない。こうした中で、県立こども医療センターで、全国の新生児医療に従事する医師を対象に、同センター小児科で3ヶ月以上1年未満の短期の研修を受ける医師を公募する「短期有給研修医制度」が、県の「職員提案事業制度」により、同センター医師から提案され知事によって採択された。これは大変に注目すべき制度で、医師確保に苦慮するこども医療センターと、短期の研修で戻っていく地方病院双方にとり大きなメリットがある。現場の実態に即した素晴しい政策制度提案である。県は、こうした人材育成・確保に努力する病院の声に耳を傾けなければならない。
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