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【主張】排出量取引 EUと競える制度構築を
地球温暖化防止を目的に、国内で試行を始めた日本型排出量取引制度への参加企業が501社に上った。この数を多いと考えるか、少ないと考えるか。まだまだ様子見の企業が多いようだが、これからの試行を通して日本の実情にあった独自の制度を構築してほしい。
参加申請は、東京電力などのエネルギー企業や重工業だけでなく、コンビニエンスストアや航空会社、大学などからもあった。幅広い業界からの参加という点で、スタートとしてはまずまずといえそうだ。
排出量取引は目標以上に二酸化炭素(CO2)を削減できた企業はその余った排出枠を、目標を達成できなかった企業に売却できる。日本型制度の特徴は、自主参加と排出量の削減目標を企業自らが定める方式にした点である。
また、大企業が中小企業の排出削減を支援して生じた余剰排出枠をその大企業が取得することもできる。国全体の排出削減を促進するという面から中小企業支援は重要な手法である。実際の取引は来年2月ごろから始まる。
ただ、忘れてならないのは、排出量取引があくまでCO2削減の補完的手段だということだ。排出枠の売却が排出削減の動機付けになっても、取引だけで日本全体の排出量は減らないからで、手段と目的を取り違えてはならない。
排出量取引では企業ごとに排出枠を義務付ける方式の欧州連合(EU)が先行している。だが、いまも試行錯誤が続いている。
排出枠割り当て方式について、無料から有料の公開入札に切り替える方針だったが、金融危機に伴う景気の悪化で完全実施が危ぶまれているという。
EUが必ずしも制度設計で優れているわけではない。日本としては、どちらが国際標準になるかを競う意気込みが必要だろう。
気候変動枠組み条約の第14回締約国会議(COP14)は先週末、これといった成果もなく閉幕した。世界の景気悪化が各国の議論を停滞させたようだ。
だが、京都議定書に続く2013年以降の新たな温暖化防止の枠組みの策定は重要な課題である。経済情勢を思考停止の理由にしてはなるまい。
むしろ、温暖化対策を新たな技術開発の原動力にするぐらいの議論が必要だ。それが経済成長につながるよう期待したい。