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社説:COP14閉幕 環境と経済の両立日本が示せ

 京都議定書以降(ポスト京都)の枠組み作りを終えるまで、残すところ1年。重要な通過地点である国連の「気候変動枠組み条約第14回締約国会議(COP14)」が閉幕した。

 来年の作業計画では一致したものの、具体的中身では進展に乏しい。先進国も途上国も、あと1年で互いの溝を埋め、地球の気候安定に向けて協力し合う覚悟が要る。

 会議の焦点となったのは、2050年ごろまでの長期目標、20年ごろまでの中期目標、新興国の責任分担などだ。

 長期目標については、日本などが「50年までに世界全体で温室効果ガスの排出量を半減させる」との合意をめざしていた。しかし、削減義務を課せられることを警戒する途上国の反対で削減幅は盛り込まれずに終わった。

 先進国の中期目標については、まだ数値を公表していない日本などが「時期尚早」と反対した。結果的に「20年までに90年比で25~40%の削減が必要」という国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の指摘を認識するという表現にとどまった。

 これは、1年前のCOP13と同じ表現で前進はみられない。途上国への資金援助でも、目立った進展はなかった。

 こうした議論の中で改めて浮き彫りになったのが、先進国と途上国の対立だ。現在の京都議定書では、温室効果ガスの削減義務を負っているのは先進国だけだ。これまで経済発展を享受し、温室効果ガスを排出してきた先進国が責任を果たすのは当然だ。

 しかし、中国やインドをはじめ、経済発展とともに大量のガスを排出している国がある。そうした新興国の排出抑制を実現しない限り、地球規模の対策は意味をなさない。

 にもかかわらず、互いに相手が果たすべき義務を求めることを優先し、歩み寄りは進まなかった。

 「環境先進国」のドイツをはじめ、これまで温暖化交渉で主導権を握ってきた欧州連合(EU)も今回は存在感が薄かった。金融危機による景気後退が影響したためとみられるが、EUに限らず、経済状況の悪化ですぐに腰が引けてしまうようでは、ポスト京都の長期的な対策は望めない。

 むしろ、景気対策を温暖化対策と結び付けていく知恵が必要だ。経済と環境の両立が相反しないことを示せなければ、途上国を説得することも難しい。

 今回の会議は、オバマ次期米大統領の登場を待つ姿勢も見られた。確かに、オバマ政権の出方は世界の温暖化対策に大きな影響を与える。だが、それを漫然と待っていては交渉の最終段階で混乱が起きる。EUが及び腰になっている今、景気対策と連動させた温暖化対策の方向性を日本が打ち出す時ではないか。

毎日新聞 2008年12月16日 東京朝刊

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