悪いことは重なるもので、倒産寸前まで追い込まれたときに「経営のプロ」と称されるある人物を紹介されたんですが、この人が実は詐欺師でね。会社の財産を根こそぎもっていかれたどころか、巨額の手形詐欺にあって会社は倒産してしまったんです。
その手形は暴力団にも回ってたみたいで、ある日ヤクザとおぼしき屈強な男が会社に来たんだけど、返す金はないというと、そのまま車に乗せられてね。横浜港の倉庫に連れていかれて、殴る蹴るの拷問ですよ。痛さや苦しさより排泄と寒さがつらかった。なにしろ縛られたまま真冬の倉庫に一日監禁されたわけですから、小便もできないんです。仕方なく服の中でしましたけど、後でそこがさらに冷えるんですよね。
確かに恐怖感はあったけど、命の危険までは感じませんでしたね。だって彼らの目的は金の回収だから。僕を殺したら金が返ってこなくなってしまう。まぁ僕自身もだまされたとはいえ、お金を借りて返していないのは事実だからこんなメに合うのも仕方ないよね。
危険なメといえば、日本刀を持った右翼が「天皇陛下を冒涜する記事を載せた矢崎を斬る!」なんて編集部に怒鳴り込んできたこともありました。そのときは、歴代の天皇の名前を挙げ続けたら、「まいりました」といって帰っていきましたけどね(笑)。
他にも「矢崎、月夜の晩ばかりじゃねえぞ」とか、いろいろ脅しを受けたりしましたが、それが原因で雑誌つくりをやめようと思ったことは一度もありません。逆に「おもしろい、もっとやってやろう」っていう気持ちが強くなるんです。「刺されたらむしろ名誉」だと思ってました。反権力、反権威、反体制を謳っている以上、暴力や脅しには負けてられないんですよ。この姿勢は今後も変えるつもりはありません。まぁ今まで殺されないですんでるんだからこの先も大丈夫でしょう(笑)。
それよりも痛いのが、広告主に降りられてしまうこと。右翼は僕のところばかりじゃなく、スポンサーのところにも行くからね。会社の前に街宣車を乗り付けられて、一日中がなり倒されたら、そりゃ企業もたまったもんじゃないよね。そんなことがあると、やっぱり次の号から広告引き上げちゃう。これが何よりも痛かったね。
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