CASE2
商品の話をしない営業で
年400人の顧客を開拓
10年で4000人の顧客を抱えるまでになった生保営業マン。 相手の身になり“保険を勧めない”姿勢で顧客の信頼を得る。
社長杯を9年連続で獲得
鎌田 聖一郎さん
ソニー生命保険
ライフプランナー
1998年ソニー生命保険に入社。優秀なライフプランナーに贈られる社内最高賞とも言える社長杯に入社以来9年連続で入賞。また、社内外を問わず、営業に関する講演活動などでも活躍する。
ソニー生命保険のライフプランナー、鎌田聖一郎さんは入社10年目にして約4000人の顧客を抱える。単純計算すると年400人超のペースで顧客を増やし続けたことになる。抜群の成績を評価されて、他社の社長賞に相当する「社長杯」を9年連続で獲得している。
驚異的な顧客開拓を支えるのは「紹介」だ。もっとも、「誰かご紹介願えませんか」という営業マンの依頼に喜んで応じる客は少ない。ところが、鎌田さんに会った人は、契約をする、しないにかかわらず、その多くが鎌田ファンになり、自然と紹介につながる。秘訣は「一期一会の精神」にある。どんな相手にも心から関心を抱いて向き合う接客姿勢が信頼を生む。
「いい人だ」とおまじない
相手への関心を“本物”にするために、鎌田さんは自分にまじないをかける。アポイントメントに向かう前に心の中で「今日会う人はいい人だ」と唱えるのだ。
挨拶後の第一声は「何でも好きなことを聞いてください」。もちろん、「紹介者」といってもいろいろだ。上司や取引先から言われて仕方なく会うという人もいる。時には「別に聞きたいことはないな」「保険には興味がないですから」と、ぶっきらぼうな答えが返ってくることもある。そんな時も、鎌田さんは笑顔で「はい、特に何もないのですね」とオウム返しで答える。受け答えの基本はYesであり、決して「しかし」で返したり、反論したりはしない。
「警戒心を抱いている方の場合、相手の心情を理解していることを示すことが何より大事」と鎌田さんは言う。「あなたが不快に思っていることを私は理解しています」という姿勢を見せることで、相手の心のバリアーは少しずつ緩む。
鎌田さんの必携アイテム。会社のパンフレットとは別に、「自分史」というオリジナル冊子を作って会った人に渡す。
保険の話は相手が切り出さない限り最後までしない。相手の悩みによっては、行政サービスで対応できる場合もある。そんな時は保険ではなく、どのような行政サービスが使えるかを教える。
筆まめでもある。契約に至らずとも、一度でも会って話をした人には3カ月に1度のペースではがきを書く。その際に初めて会ったのはいつ、どんな場所だったかを確認するため、4年分の手帳を一つにまとめて使っている。
そうして頻繁にはがきを書けば、会った人をなかなか忘れないようになる。相手から忘れられないという効用もある。3カ月に1回届くはがきのおかげで、最後に会ってから5年以上経った人でも契約に至ることがあるという。
鎌田さんのチェックリスト
新規顧客を開拓する
- 「今日会う人はいい人だ」と心の中で唱える
- ネガティブな意識があっては言葉も表面的になってしまう。心の底から「いい人だ」と思うために実践する。
- 相手に心から関心を抱く
- 相手に心から関心を抱くことで、誠心誠意の対応ができるようになる。
- すべて“Yes”で答える
- 相手が何を言ってきても否定したり、反論したりしない。まずは相手の気持ちや立場を理解したうえで、誤解を解いていくようにする。
- ゆっくり相づちを打つ
- 相手と同じペースや、速いペースで相づちを打つと「軽い相づち」の印象を与え、適当に聞いているように思われる。
- 相手の悩みを聞く
- 初対面では問われない限り、保険の説明はしない。まずは、相手の悩みを聞く。
- オリジナル冊子を活用する
- 自分に親近感を抱いてもらえるようなオリジナルの自己紹介冊子を持参する。
- 定期的にはがきを出す
- 相手を忘れない、相手から忘れられないよう、一度でも会った人には3カ月に1度のペースではがきを送る。
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