自民、公明両党による二〇〇九年度の与党税制改正大綱が決まった。次期衆院選を意識し、過去最大規模の住宅ローン減税など政策減税攻勢をかける一方で、税制の抜本改革には踏み込みを欠くアンバランスさの際立つ内容となった。
大綱は、今回の基本的な考え方を「景気回復を最優先で実現する決意で、内需刺激へ大胆かつ柔軟な減税措置を講じる」とした。その手だてとして打ち出したのが住宅や自動車、中小企業などに対する数々の減税策だ。医療や年金を賄う財源とされる「たばこ増税」の見送りなど増税を徹底的に排した。
住宅ローン減税は、〇九年から一三年までの入居者が対象となる。ローン残高の上限を五千万円とし、一般住宅では十年の合計で最大五百万円、「二百年住宅」と呼ばれる寿命の長い家は最大六百万円が税額控除される。自己資金で省エネ改修などした場合の減税制度も創設するとしている。
自動車関係では、低公害車を優遇する「グリーン税制」を拡充する。新車購入時などに、自動車重量税と取得税を〇九年度から三年間免除や軽減する。中小企業に対する法人税の軽減税率を22%から18%に二年限りで下げることも盛り込んだ。
金融危機の影響を受けて厳しい状況にある自動車や住宅、中小企業などへテコ入れして景気を刺激しようとの狙いはうなずける。住宅などは家電製品や家具類の買い替えといった波及効果の期待も大きい。だが、世界的な景気減速の中で、どれくらい成果を挙げられるか疑問視する向きも多い。
加えて、焦点とされていた消費税率の引き上げを含む抜本的税制改革の道筋が示されなかった。消費税については、社会保障の主要な財源に充てることで政府、与党は一致している。にもかかわらず、麻生太郎首相が引き上げ時期を「三年後」と明示するよう指示したのに対し、与党は選挙への影響を懸念して応じず、大綱では「一〇年代半ばまでに持続可能な財政構造を確立する」とのあいまいな表現にとどまった。引き上げ幅も示していない。
選挙をにらんで、おいしそうなものばかり並べて難題を先送りするのでは国民の将来への不安は除けまい。消費動向にも影を落とす。麻生首相は、政府が年内に策定する税制改革の「中期プログラム」に明記する意向をあらためて示した。どう与党との溝を埋められるか。首相の指導力が問われる。
麻生太郎首相が自ら記者会見し、急速な景気悪化に対応して雇用対策や企業の資金繰り支援などを盛り込んだ「生活防衛のための緊急対策」を実施すると発表した。
生活防衛対策の総額は二十三兆円に上る。雇用創出に向けた地方交付税の一兆円積み増しなどが柱で、二〇〇八年度第二次補正予算案と〇九年度当初予算案に計上する。
定額給付金の支給などを目玉に、十月に発表した追加経済対策の補強措置であり、再追加対策といえる。麻生首相は「米国発の金融危機が尋常ならざる速さで実体経済に影響し始めている」と危機感を強調した。
確かに金融危機による景気悪化は急速に拡大している。何とか悪影響を食い止めようとする麻生首相の意気込みは理解できるが、どうしてもこちらの心に響いてこない。
今回の生活防衛対策は先の追加経済対策と同様、国会での審議が今国会ではなく来年一月からの通常国会になるからだ。関連法案が早期に成立しても、効果が出始めるのは二月から三月にかけてとみられる。雇用不安に拍車が掛かり、年末年始の窮状が懸念される中、こんなスピード感に欠けた対応でいいのだろうか。
問題のネックは、追加経済対策の裏付けとなる〇八年度第二次補正予算案の今国会提出を見送ったことだろう。批判が多い定額給付金などに対する野党の追及を回避し、解散・総選挙を先送りするためとされる。
補正予算案の提出見送り批判などの影響で、麻生政権の支持率は急落した。局面打開を図るため、景気対策の上乗せで信頼回復を狙ったのだろうが、国民の理解が得られるとは思えない。今国会の会期を再延長してでも対応すべきである。
(2008年12月14日掲載)