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今年、そして来年も円高は進むか。各国の景気を鑑みて…

 

 さて、これを踏まえて、今年、来年の為替相場について考えると、米経済後退が他国、他地域に波及したことによるグローバルリセッションをテーマとした、諸通貨売り、クロス円の円高が年内は継続しましょう。日本も勿論、景気の下向きの動きに飲み込まれているのですが、元からデフレ脱却をしていない我が国経済の方向は、低位で横ばいのまま。それゆえの円買い。一方で、今回の米信用不安の増幅を受けて、ドル/円相場ではドル売りが鮮明となり、円相場については、対諸通貨でも円買い、対ドルでも円買いという形が年内は継続すると考えます。それは、欧州中銀、たとえば欧州中央銀行(ECB)や英中央銀行(BOE)の複数回の利下げを織り込む年末、来年初までと設定しているからです。したがって、年末に向け、水準的には2桁の円高が定着し、滞空時間が長いものとなる可能性を見込むのです。

 しかし、来年については、基本的にはどの国も景気の向きは下向きになるため、その方向性の差はない。その時には、景気の下向きの角度、つまり、景気後退の度合いで売られる通貨が決まるでしょう。となると、一番景気が相対的に悪いのは米国と考えられるため、今年の1〜3月に見られたようなドル全面安という展開を見込みます。したがって、対ドルでの諸通貨買戻しによるクロス円の円安が、ドル/円の円高を阻害する形となり、来年上期については、メインシナリオ90〜109円といった円高傾向での推移が予想されます。もちろん、リスクシナリオとしては、更なる円高であって、上限は109円で一定ですが、下限を80〜85円に設定しておきたいところです。

 なお、米大統領選の結果については、民主党オバマ氏勝利の場合は、米経済の悪化の速度がいくらか加減されるとの見立ての下、メインシナリオの推移。一方、共和党マケイン勝利はブッシュ政権の悪いイメージを受けて、米経済の悪化の速度が速まるとの見立ての下、リスクシナリオの推移を想定します。
(※この記事は9月下旬に執筆されたものです)

 

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● 記事は著者個人の見解を示したものであり、ロイターの見解ではありません。
● この記事は2008年9月に作成されたものです。
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宇野 大介 氏

三井住友銀行
市場営業推進部
チーフストラテジスト

 

1990年、住友銀行(当時)に入行。91年7月、市場営業部公共債ディーリング・セクションに着任、マーケットアナリストとして活躍。その後証券部、市場営業第一部を経て、2001年、三井住友銀行・市場営業統括部に配属。相場予測において18年目のキャリアを誇る。『日本経済新聞』ほか主要紙、『週刊東洋経済』『週刊エコノミスト』など雑誌にも寄稿。またテレビ東京『モーニングサテライト』でレギュラーコメンテーターを務めるほか、NHK『おはよう日本』、TBS『みのもんたの朝ズバッ』、テレビ朝日『報道ステーション』などにも出演している。 近著に『覇権国アメリカの終焉』(時事通信社刊)がある。