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米国による覇権が終焉する、という論拠

 

 少し以前までは、米国とのカップリングで他国の景気が下向いてきたことで、グローバルリセッションに拠る諸通貨売り。つまり、クロス円の円高が進行していました。この段階では、米経済の悪さを背景としたドル売りから諸通貨売りになったことで、ドル/円に引き直せば、結果としてドルも円も買われるということで、ドル/円相場の動きは留まっていたのですが、そこに米国金融不安の波が押し寄せた。結果、ドル/円でもドル売り円買いという格好に。つまり、円は全面高になっているわけです。円高は株価の下落要因になってしまうので、景気対策、金融政策、そして為替政策といった観点から、日本サイドの動き、変化に期待したいところです。しかし米国が覇権の座から揺らぐであろう先行きを見据え、商売圏、つまり主な貿易取引相手国を米国以外にシフトさせ、ドル、米国を介在させないことを企図することなども必要になります。

 それは他国も同様で、米国頼みの経済体質から、各地域ごとのブロック経済圏を設立するに至ったのは、それを意識した動きなのでしょう。米国離れをすべき理由については、50〜60年という長期サイクル論の観点から考えたとき、その時間間隔でインフレや技術革新、覇権が循環しており、米国覇権の揺らぎが見えているからです。ざっくり言って、米国の覇権の始まりが、第二次世界大戦後からと考えれば、1945+60=2005年であって、既に米国の時代は終わっていると考えられます。また、ソ連の崩壊した1991年12月以降、つまり冷戦構造が終焉し、1992年1月から大統領となったクリントン政権時に、米国の基幹産業が金融に設定され、その後、IT、グローバルという合言葉の下、インフレなき成長などという景況感、価値観のバブル的な時代があった。これらはすべて物事の行き過ぎを示した時代であって、今後はその「最高の時期」の揺り戻しが来ると考えるのは、おかしな感覚ではないでしょう。米国離れの動きは、イラク戦争突入にあたって、国連加盟国を束ねられなくなり、米国にモノを言う国々が出てきたことを考えるに、その国力、地位の低下を感じるわけです。

 したがって、これからの為替相場に対峙するスタンスとしては、総じてドル売り、諸通貨買いが基本方針となります。円については、10年サイクルで動く中期サイクルで見た次の米経済の谷であろう2011年(前回の谷は同時多発テロのあった2001年。それにプラス10年で2011年と算出)に向けては円が諸通貨同様に堅調と考えられますが、堕ちて行く米国から離れて、日本が独自のスタンス、価値観、行動規範を構築しなければ、2011年以降、ドル同様に売られる通貨として位置付けられてしまう可能性もあります。
(※この記事は9月下旬に執筆されたものです)

 

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● この記事は2008年9月に作成されたものです。
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宇野 大介 氏

三井住友銀行
市場営業推進部
チーフストラテジスト

 

1990年、住友銀行(当時)に入行。91年7月、市場営業部公共債ディーリング・セクションに着任、マーケットアナリストとして活躍。その後証券部、市場営業第一部を経て、2001年、三井住友銀行・市場営業統括部に配属。相場予測において18年目のキャリアを誇る。『日本経済新聞』ほか主要紙、『週刊東洋経済』『週刊エコノミスト』など雑誌にも寄稿。またテレビ東京『モーニングサテライト』でレギュラーコメンテーターを務めるほか、NHK『おはよう日本』、TBS『みのもんたの朝ズバッ』、テレビ朝日『報道ステーション』などにも出演している。 近著に『覇権国アメリカの終焉』(時事通信社刊)がある。