米金融界、ひいては米経済を震撼させている米サブプライムローン問題ですが、その、そもそもの成り立ち、そしてその影響度合いを記したいと思います。逆に言うと、これが把握出来ていないと、問題の所在を認識することは出来ませんし、処方箋も描けないからです。正に「敵を知って己を知れば、百戦危うからず」です。その上で為替相場の先行きを考えたいと思います。
では、まずそのサブプライムローンの問題から波及した影響等について、金額で量りたいと思います。サブプライムローン債権を組んだ資産・債務担保証券市場は2兆ドル(当時の為替で言うと240兆円)規模と言われていました。低所得者層向けだけに高い金利を付けたローンが元になっている、この証券には高い金利が付いていますが、ローン返済が滞らないことが前提。前提が狂えば、その証券に付与されている高い金利は絵に描いた餅です。そうなると、この証券だけでなく、すべてが怪しく映る。「本当にこの金利が手に入るのか?」となるわけです。
日本がバブル崩壊で不良債権に喘いだとき、その規模は150兆円。GDP500兆円の3割です。米国のGDPは1500兆円ですから、その3割が劣化したら450〜500兆円。米証券市場の規模が25兆ドル(2500兆円)であることと照らし合わせれば、日本と同じこと(デフレ)、更に悲観的なことが米国で起きるのは想像に難くないのです。「サブプライム問題」は「証券市場の劣化」から、更に姿を変えて、現在の「実体経済に悪影響」を及ぼすという過程を踏んでいっています。米信用危機の終息には時間的に日本の倍はかかると、去年の秋ごろから見ていました。処理する金額が多すぎることや、証券化商品が世界各地にバラまかれており、適切な処方箋が見当たらないことを理由として考えていたからです。いわゆるセーフティーネットという考え方が有効にワークすると考えた場合でも、上記、25兆ドルと比較すれば、9月20日に発表された不良資産の最大買取額の7000億ドルでは話になりません。証券市場の劣化は、疑心暗鬼の結果であることを考慮すれば、証券市場全体をカバーできる大きさでないと不十分なのです。
さらに言うと、米政府は個別企業を救済する動きや金融システムの安定化を目指していますが、重要なのは「景気回復という目線」と考えます。それは、一番初めに記した「敵を知って己を知れば、百戦危うからず」なのです。そもそも、今回の金融不安の発端は、サブプライムローンの返済が滞ったことを起点としており、そこを元に戻すことこそが適切な処方箋と考えられるからです。景気が復調すれば住宅市況も回復し、サブプライムローン等を組んだいわゆる証券化関連証券の価格も上昇させることが出来るからです。米政府は同じ7000億ドルの財政赤字を覚悟しているのであれば、景気を回復させるために、同額の減税対策を実施することに加えて、ゼロ金利政策や量的緩和策などを実施すべきと思われます。
(※この記事は9月下旬に執筆されたものです)
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● 記事は著者個人の見解を示したものであり、ロイターの見解ではありません。
● この記事は2008年9月に作成されたものです。
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三井住友銀行
市場営業推進部
チーフストラテジスト
1990年、住友銀行(当時)に入行。91年7月、市場営業部公共債ディーリング・セクションに着任、マーケットアナリストとして活躍。その後証券部、市場営業第一部を経て、2001年、三井住友銀行・市場営業統括部に配属。相場予測において18年目のキャリアを誇る。『日本経済新聞』ほか主要紙、『週刊東洋経済』『週刊エコノミスト』など雑誌にも寄稿。またテレビ東京『モーニングサテライト』でレギュラーコメンテーターを務めるほか、NHK『おはよう日本』、TBS『みのもんたの朝ズバッ』、テレビ朝日『報道ステーション』などにも出演している。 近著に『覇権国アメリカの終焉』(時事通信社刊)がある。