エクアドルが対外債務利払い停止、今後想定されるシナリオ
[キト 12日 ロイター] エクアドルは、旧政権が違法に約定したとして2012年償還のグローバル債について債務不履行(デフォルト)を決定した。エクアドルのデフォルトは過去10年足らずで2度目。
コレア大統領は2012年債について3100万ドルの利払い停止を決めたが、クロスデフォルト条項により、2015年と2030年償還の他のグローバル債もデフォルトすると見られる。
以下はデフォルトを受けて今後予想されるシナリオ。
<訴訟とエクアドル資産の差し押さえ>
エクアドル債の保有者はエクアドルの資産差し押さえのため、あるいは同国が支払いのため海外に保有している銀行口座の凍結などを求め、直ちに提訴する可能性がある。
債券保有者はエクアドルが支払いできる十分な資金を保有していると見ており、同国が海外に保有する外貨準備のドルや石油代金の差し押さえに動くと見られる。
エクアドルはデフォルトした場合、いかなる法的措置にも対応する準備を整えていると言明していた。しかし、債券保有者は資産差し押さえにより、エクアドル経済にかなりの打撃を与えることができると見ているという。
アルゼンチンは2002年にデフォルトした際、政府の債務再編に応じていない債券保有者から提訴され、現在も係争中だ。
米連邦地裁は10月、アルゼンチン債保有者が返済を求めていた訴訟で同国年金基金が保有している米国での投資資産の凍結を命じている。
<デフォルト債の再交渉>
エクアドルはデフォルトしたグローバル債の交渉で強硬姿勢を示し、総額38億ドルのこれらグローバル債の元本削減を求めてくる可能性がある。
アナリストによると、コレア大統領がデフォルトの構えを示し始めた最大の理由は元本削減と償還期間の延長とされる。大統領はタフネゴシエーターとして知られ、交渉は数年続く可能性がある。
しかし債券保有者の多くは債務再編を拒否し、法的措置に訴える可能性が大きい。
<国内外投資の減少>
国際資本市場はすでに世界的な金融危機の影響を受けており、エクアドルの民間セクターは資金調達が一段と難しくなっている。製造、農業、サービス関連のエクアドル大手企業は隣国のペルーやコロンビアで借り入れや事業を拡大する可能性がある。
投資家がエクアドル政府への不信を募らせている中、資金調達が困難になっているため、外資系の資源会社による大規模プロジェクトの早期開始に影響が出てくる可能性がある。石油会社も大規模投資を控えている。
原油価格の急落により歳入が減っている状況で、国内外の投資の減少が国内経済に追い討ちをかけると見られている。
エクアドルではこれまで3人の大統領が民衆の抗議活動や議会での混乱で政権の座を追われているため、今回のデフォルトが政治的な不安定要因になる可能性もある。
<国際金融機関が融資抑制>
国際金融機関は今後、エクアドルに対する融資を抑制する方針で、同国は、原油価格の悪化で財政状態が悪化しているベネズエラのような友好国への融資依存度を高めると予想される。
米州開発銀行(IDB)はエクアドルがデフォルトの構えを見せていたことから、融資の承認を遅らせているが、コレア大統領はこれに反発している。世界銀行など他の国際金融機関は今後、エクアドルへの融資を行わない可能性がある。
資金調達が困難になることに加え、原油価格の下落により、来年度予算の財源確保が難しくなれば、エクアドルはこれまで国民の支持を得る上で重要な役割を果たしていた社会保障関連の支出を削減する可能性も出てくる。
(ロイター日本語ニュース 原文執筆:Alonso Soto、翻訳:宮本 辰男)
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