為替こうみる:年末までにドル90円割れも、オプション取引でドル急落リスク高い=バークレイズ銀 梅本氏
<バークレイズ銀行 チーフストラテジスト 梅本徹氏>
ドル/円相場は年末までに不安定な状況が続き、90円を大きく割り込むこともあると予想する。円キャリー・トレードを巻き戻す動きが今後とも継続するためだ。円キャリートレードには2タイプある。1つは日本人の個人投資家が保有する総額50兆円の外貨建て資産だ。これらは外貨建て預金、債券、投資信託などの形をとっているが、これらはそう簡単に巻き戻されないし、一部巻き戻されたとしても為替相場へのインパクトは限定的だろう。
他方、投資銀行が日本の企業、大学、輸入業者を対象に販売した通貨オプションを組み込んだデリバティブ商品はドル/円相場の波乱要因になりうる。
例えばドル/円相場が110円のときに、毎月1ドル=90円で100万ドルのドルを10年間にわたって購入できる商品がある。この商品には、スポット相場が一度でも90円を割れると、毎月1ドル=120円で300万ドルのドルを10年間購入するという種類の条項が付帯している。
販売元の銀行はドルが90円に向かって下落する局面では、デルタヘッジのドル買いを実施するが、90円を割れた場合は一気に売り向かうことになる。これが10月下旬にドルが95円から90円台に急落した背景だった。80―90円の間には、同様のノックアウトが並んでいるため、90円を割り込んだ場合は、ドルの下落が加速することが考えられる。
(東京 2日 ロイター)
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