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更新:5月19日 09:50インターネット:最新ニュース

「マスメディア広告万能の時代は終わった」・休刊する「広告批評」の天野祐吉氏

 広告ジャーナリズムの雑誌「広告批評」(マドラ出版)が来年4月の30周年記念号を最後に休刊する。1979年に創刊し、テレビCMを中心に急拡大したマスメディア広告を大衆文化として取り上げてきた。テレビに代わり、ウェブ広告が広がる今、「このへんでひとつの区切りをつけたい」という。生みの親であるマドラ出版社主の天野祐吉氏に聞いた。

――2008年4月号の編集後記で「マスメディア一辺倒の時代からウェブとの連携時代へ、ふたたび大きな転換期を迎えています」と書かれました。休刊を決めた理由を改めて教えてください。

 「広告が大きく変わろうとしている今、ひとつの区切り時を迎えているということです。『広告批評』と言う時の『広告』は、マスメディアとしての広告を指してやってきました。テレビCMが全盛期を迎えて、今は30年くらい経ったところにきています。時代の終わりを告げて、やめるとしたら今かなと思っていました」

――マスメディア広告の時代は終わったということでしょうか。

 「ええ。マスメディアの広告が“万能”の時代は終わったということですね」

――時代が終わったと感じたのはいつ頃ですか。

 「4、5年前からその傾向は出てきているんじゃないですか。マスメディア広告は今も相変わらず続いているけれど、その後に出てきたウェブという媒体が急速に伸びてきたということです」

 「(前編集長の)島森路子とは2、3年前からウェブの問題について話し合ってきました。『どこかで幕の引き時だよね』という話をしていたんです。ただ、ある日突然、自分勝手にそれを告げるのはおかしいから、どこか切りがよいところがいいんじゃないかと考えました。それで創刊30周年にしたんです」

■メディアの変化と消費社会の成熟

――天野さんはテレビCMについて「暴力的」という言い方をされています。ウェブ広告が伸びることで何が変わったのでしょうか。

 「テレビ広告は視聴者が見たくなくても見せられちゃうところを暴力的と言っているわけです。すべてが暴力的だとは思わないけれど、テレビのCMは見ないではすまない。そのたびに消すわけにもいかない。暴力性を内包しているメディアと言ってもいいのかな。クリエーターは、面白くいい広告を作ることで暴力的であることを避けようとしています」

 「それに対してウェブ広告は、見ようという意思がなければ誰も見ない。向こうから押しかけてくるメディアではありませんからね。僕なんかは、数年前からそういうメディアへの移行が始まったなという感じがしていました」

1979年4月に創刊した「広告批評」

 「メディア状況の変化と同時に、消費社会の成熟度が行き着くところまでいったということもあります。創刊した当初は、マスメディアが発達して、大量生産、大量消費、大量流通という20世紀の巨大な歯車がぐわーと回り出した頃。今は巨大な歯車がどこか引っかかって止まり気味になっているわけでしょう。もう以前のようにがーがーと音をたてて大量消費が実現している時代ではないですよ」

 「今は物を買い揃えることが豊かな時代じゃなくて、物を買わないことが豊かさへの道だという逆説が出てくるような時代ですからね。広告批評は20世紀という時代に対する批評行為をしていたメディア。21世紀になってちょうど変わり目を迎えたという感じがあります」

■比較情報が簡単に手に入る時代に

 「ウェブによって消費者自身が成熟したということもあるのかもしれないなあ。いちいち広告で踊らされる時代ではなく、自分から主体的に情報を得ようと思えばいくらでも手に入る時代になったということです」

 「ウェブがここまで普及する前はね、情報が氾濫しているようで、実は欠落している情報がいっぱいあったわけです。基本的に広告は自社にとって都合の悪い情報は教えませんから、他社との比較情報を出さないんですよね。むしろ比較しにくくしている」

 「例えばソニーとパナソニックのブルーレイ・レコーダーのどちらを買おうかなと思ったら、以前はカタログを両方から取り寄せるか、ビックカメラにでも行って、商品を見たりカタログをもらって検討したりするしかなかった。ところがウェブが発達したことで、家で簡単に比較情報が手に入るようになったわけです」

 「そうなってくると、別に広告はいらないと言えばいらない。新しい商品が出ましたよ、というニュースとしてのマス広告は必要かもしれませんが、それ以上の、商品の性能に関する情報はなくてもいい。ウェブが発達したことで、それまでは情報過剰社会ではなく情報過少だったということが分かったんじゃないですかね」

■マスメディア広告に残るのは「あいさつ機能」

――そうなると、広告の役割は今後なくなっていくのでしょうか。

 「なくなりはしないけれど、マスメディア広告は変わらざるを得ないのではないかと思います。現にもう変わり始めていますね」

 「広告は基本的に商品についての『インフォメーション』と、その商品の仕様や性能を説明する『リポート』、企業の考え方や姿勢を伝える『オピニオン』という3つの情報で構成されています。このなかのリポートという部分はほとんどいらなくなっていくんじゃないですか。広告でどんなことを言っても、ウェブを見たら消費者にはよく分かっちゃう」

 「インフォメーションについても、企業がいくらで商品を発売したということが分かっても、他社と比べてどうなのかということは広告ではなかなか分かりません。その点でウェブの方が優れています」

 「ただ、オピニオンについてはウェブでは分からないですね。もちろんウェブで探っていけば分かるかもしれないけれど、その会社がみんなに対してどういう姿勢で何を言いたがっているかという、一種のあいさつ機能かな。そこはマスメディア広告が一番強いところではないですかね」

 「例えば、ブラッド・ピットが嵐の中を歩いてくるソフトバンクのテレビCM(http://mb.softbank.jp/mb/special/bpcm/)がありますね。あれは完全にソフトバンクの企業広告だと思うんです。もちろんちらっと出てくる商品の広告にもなっているのだけれども、それ以上に、車まで飛ばされてしまう嵐の中をブラッド・ピットがケータイしながら歩いてくるという、それが広告の本体でしょう。それは何なんだ、そんなものがいるのかということですよ」

 「そう考えると、従来の常識からは何の意味があるのかと言われるものが、これからの広告になるのかもしれないですね」

――オピニオンを伝える場としてテレビ広告が残るということですね。

 「そうです。最近、『詳しいことはwebでどうぞ』というCMがよくあるでしょう。あれはマス広告の正体を自分でうまく暴露していますね(笑)。『詳しいことはあちらでどうぞ、私たちは企業としてのごあいさつをしているだけです』というふうになっているわけです」

 「ただ、この感情的というか、冗長的なつながりというのも、人間社会では大事なことでね。同時代を生きている企業として、市民になんだかいやな会社だなと思わせるか、いいなと思わせるか。人間はよい悪いということだけで物事を判断していなくて、好き嫌いということで判断している。性能のよい悪いはウェブでしっかり探せば分かるかもしれないけれど、好き嫌いはウェブを見ていても分からないわけです」

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