▽不振組と格差鮮明、FA対策へ透ける思惑
11年連続Bクラスの広島で景気のいい契約更改が目立っている。1000万円を超える更改者は最近5年間で最多で、今後は新たな1億円プレーヤーの誕生も確実。一見すると大盤振る舞いの様相だが、清貧な球団経営の堅実さもうかがえる。
9勝の大竹寛投手が1400万円増、正妻に座った石原慶幸捕手は5000万円。残留した東出輝裕内野手は自ら「破格」という6000万円増の1億円で契約した。今後も大幅アップとなる栗原健太内野手や永川勝浩投手が控え、例年になく華々しい年の瀬だ。
3位争いに敗れた今季は、若手の台頭や中堅のレギュラー定着が年俸増に反映した。鈴木清明球団本部長は「査定制度は大きく変えていない。伸び盛りの若手の成長でチームが世代交代を迎えている」と説明する。
大幅増を提示する球団は例年以上にシビアな更改もしている。18%減となった梵英心内野手ら減俸更改は、昨年の12人を大幅に上回る23人。シーズン通して頑張った選手と不振組を色分けした提示となっている。
広島の今季の日本人選手総年俸は12球団最下位の12億2750万円だった。来季の総年俸は約3億円増えるとみられるが、黒田博樹投手らが在籍していた昨季は下回る。来季も12球団最下位が濃厚で「奮発している」とは言い難いのが実情だ。
年俸の増額分が「多い」と感じるのはフリーエージェント(FA)との関連がある。球界では今年からFA移籍にかかわる補償の大幅な軽減が始まった。仮に東出がFA移籍していれば、今季の年俸4000万円はチームで11番目以下のCランクで、移籍球団から金銭・人的補償はともになかった。来季は3選手(倉、横山、長谷川)が、FA権の取得が可能になる。
親会社を持たない独立採算の広島は、「球界で最も正当な年俸を提示している」との自負がある。同時にFA取得前の選手の年俸順位も軽視できなくなった。今年の契約更改は、増額した選手に来季以降の責任が増し、球団にも将来へのFA対策が透けて見える。(木村雅俊、金額は推定)
●クリック FA移籍にかかわる補償の大幅な軽減
各球団ごとに日本人選手の年俸順に上位3位をA、4―10位をB、11位以下をCとランク付け。Aランクの選手が移籍した場合、補償が年俸の80%または人的プラス年俸50%、Bは年俸の60%または人的プラス年俸40%、Cは人的・金銭共に補償なし、と従来より大幅に軽減された。
【写真説明】年俸1億円の契約に「破格だと思う。責任を残さないといけない」と話す東出
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