外国人が日本に滞在中に交通事故に遭った場合には、まず被害者の外国人が自分の本国と日本のルール(法令)のいずれに従うべきであるかが問題になります。
法の適用に関する通則法(どの国の法にしたがうかを定めた法律)によれば、
日本での交通事故(不法行為)については、事故発生地の日本の法律が適用されますので、民法の賠償規定や自賠法などが外国人にも適用されます。(法17条)
ただし、死亡事故に伴い発生する相続については、日本の基準ではなく外国人の本国法によります。(法36条)
外国人の場合の賠償額の算定に当たっては、日本人の場合でも同一事故の賠償額が個々の事情により異なりますが、さらに次のような事情が考慮されます。
1、在留資格による違い
損害賠償の対象期間が日本への滞在見込期間を超える場合に発生する問題です。
2、本国の生活水準や所得水準の違い
裁判ではこれらの事情も考慮され認定されることが多い。
外務省
世界のGDP及び1人当たりGDP
■不法行為の準拠法 (法の適用に関する通則法)
第17条 不法行為によって生ずる債権の成立及び効力は、加害行為の結果が発生した地の法による。ただし、その地における結果の発生が通常予見することのできないものであ ったときは、加害行為が行われた地の法による。
第36条 相続は、被相続人の本国法による。
■賠償額の計算に関するもの
●積極損害(治療関係費)
実費賠償を求めるものであり、日本人の場合との違いはない。
治療費や交通費といっても外国人の場合には次のような例がある
・本国で治療した治療費
・治療のための渡航費用
・外国人遺族の日本への渡航費用
・葬儀費用は本国の慣習がある程度加味される
●消極損害(休業損害、逸失利益)
休業損害や逸失利益の算定方法では被害者の所得が基準となるので、日本での収入 によるのか、本国での収入が基準とされるかにより、賠償額に差異が出ることになる。
○日本人の配偶者等、永住者の在留資格を持ち、日本で就労している外国人
日本人の場合と同じ
○就労可能な在留資格を持ち、ある程度長期滞在が見込まれる外国人
日本において得ていた収入額を基礎として計算される。損害賠償の対象期間が在留 期間を超えるときは、在留期間が更新される可能性が立証されることを条件に更新後 の期間も含めて算定される。
○短期滞在など就労不能な在留資格を持ち、長期の滞在が見込まれない外国人
本国における休業損害の発生であり、通常は本国に帰って生活をすることから、本 国における収入額を基礎として算定される。
○資格外活動、不法滞在などで日本で就労していた外国人
★休業損害
日本における実収入額を基礎として算定される。
★逸失利益
日本に滞在する可能性のある期間については、日本での実収入額を基礎として計算 し、それ以降は本国での収入額を基礎として算定される。
○不法入国した外国人
不法就労者と同じ
●慰謝料
被害者の本国の生活水準などが考慮されて、その認定額も差異が生じる傾向がある。
★傷害慰謝料
日本人の場合と同じ
★後遺障害慰謝料
○日本人の配偶者等、永住者など
日本人の場合と同じ
○就労可能な在留資格を持ち、ある程度長期滞在が見込まれる外国人
日本人の場合を基準として、将来の在留期間、日本や本国における就労の可能性、 本国の物価水準や所得水準を考慮して決定される。
○短期滞在など就労不能な在留資格を持ち、長期の滞在が見込まれない外国人
被害者の本国の生活水準が高くない外国人の場合、その慰謝料については、日本人 の場合と比べて、低めに認定される裁判例が多い。
★死亡慰謝料
後遺障害慰謝料と同じ
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