まさかの結末に、いわき平競輪場のスタンドが静まり返った。
問題の第10R(A級準決勝)。残り1周半を告げる打鐘(じゃん)前の2コーナーで、車番(2)竹山陵太選手(23)と(5)篠塚光一選手(28)がけん制しあっていたところ、(4)矢端誠二選手(43)が単独で一気にスパート。後続の選手がなおけん制し合って追わず、矢端選手は100メートル以上の差をつけてブッチ切りでゴールした。
しかし、場内アナウンスで告げられたのは「全員失格」。まず矢端選手は、スパートをかけた地点が走行禁止のイエローラインの外側だったため、「イエローライン踏み切り」で失格。残り8選手は、先頭からあまりに離されすぎたことによる「追走義務違反」で失格となった。
大量失格といえば、昨年7月6日の久留米競輪(福岡県久留米市)第9Rで、1着以外の8選手が「追走義務違反」で失格となり、車券が全額返還となった例がある。
競輪を統括するJKAによると「9選手全員が失格になるのは極めて珍しい」。入場者2135人が“歴史の証人”となったわけだ。今回のレースに投じられた車券は1000万円超あったが、もちろん全額返還。入場者らの間でも「特に混乱はなかった」(関係者)。逆に「いいもの見せてもらった」という冷やかしのヤジが飛んだという。
しかし、お金が戻ったファンはいいが、選手のほうはタダで済まない。「追走義務違反」は競輪では重大なミス。最終12R終了後、ただちに制裁審議委員会が開かれ、“幻の1位”となった矢端選手は「失格」だけで終わったが、残る8選手はいわき平競輪場で1年間出走停止の処分を受けた。今後、上部団体から他競輪場での出走停止もあり得る「追加処分」が下される見通しだ。