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【発明の名称】 レトルトカレー及びその製造方法
【発明者】 【氏名】神奈川県相模原市相模台6−15−19

【目的】 レトルトカレー特有のレトルト臭を消去又は減少させると共に、食欲のそそられる色調を呈し、しかも、円やかな風味を有しているレトルトカレー及びその製造方法を提供する。
【構成】 カレーソース100重量部に対して、溶融温度が130℃以下のチーズを5〜100重量部の割合で配合されたものであり、該チーズがカレーソース中に均一に溶解されない状態で混合されてレトルトパウチ内に封入されていることを特徴とするレトルトカレー及びその製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】カレーソース100重量部に対して、溶融温度が130℃以下のチーズを5〜100重量部の割合で配合されたものであり、該チーズがカレーソース中に均一に溶解されない状態で混合されてレトルトパウチ内に封入されていることを特徴とするレトルトカレー。
【請求項2】チーズが、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ、チーズフードから選ばれた少なくとも一種である請求項1に記載のレトルトカレー。
【請求項3】カレーソース100重量部に対して、溶融温度が130℃以下のチーズを5〜100重量部の割合で配合し、該チーズがカレーソース中に均一に溶解されない状態でレトルトパウチ内に充填された後、レトルト加熱することを特徴とするレトルトカレーの製造方法。
【請求項4】チーズが、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ、チーズフードから選ばれた少なくとも一種である請求項3に記載のレトルトカレーの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、レトルトカレー特有のレトルト臭を消去又は減少させると共に、ツートンカラーの食欲のそそられる色調を呈し、円やかな風味を有しているレトルトカレー及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、レトルトカレーの色は野菜や肉等を入れても殆どカレーソースの黄色のみに染まって、色彩上の観点からでは単純であり、食欲のそそられる色調のものではなかった。また、摂食時のレトルトカレーを暖めた際に発生するレトルト臭は、レトルト食品における特有の臭気であり、レトルトパウチ及びレトルトパウチ内に充填された食材を高温高圧下でレトルト加熱した際に生じることから、レトルト食品においては避けることはできなかった。一方、インド製のレトルトカレー製品中に固形のチーズが添加されているものも知られているが、該固形のチーズが加熱しても溶融せずブロック状で残るチーズであるために、チーズが添加されていない場合と同様に強いレトルト臭がする状態であった。しかも、該固形のチーズは凝固したままやや硬い豆腐状になっていることから歯応えがあり、固形のチーズがカレーソース中に分散された状態を呈していることから、見るからに異物が混入されている様な状態であるので、食欲のそそられる形状や色調を呈するものではなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】特に、カレーソースは色彩上の観点からでは単一色であり、必ずしも食欲のそそられる色調ではないことから、食欲を増進させるカレーソースの匂いを阻害するレトルト臭の発生の影響は極めて重大であり、この様なレトルト臭の発生は商品価値を特に顕著に低下させてしまうことから、レトルトカレー製品の解決しなければならない大きな課題となっていた。しかし、この様なレトルトカレーの臭気の発生は、摂食時におけるカレー独特の風味をも低下させ、その商品価値を著しく低下させてしまうので、レトルト臭の発生防止に種々の研究がなされてきた。しかし、いずれの方法も満足のできるものではなかった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
[発明の概要]本発明者らは、上記問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、カレーソースに特定の性状のチーズを特定量配合することにより、レトルトカレー特有のレトルト臭を消去又は減少させることができると共に、チーズがカレーソース中に波状や渦巻状等の多数の帯状に混合された状態でレトルトパウチ内に封入されており、チーズがカレーソースと分離したツートンカラーの液状状態を示していることから、食欲をそそられる色調を呈しており、しかも、円やかな風味を有するレトルトカレーとすることができるとの知見に基づき本発明を完成するに至ったものである。すなわち、本発明のレトルトカレーは、カレーソース100重量部に対して、溶融温度が130℃以下のチーズを5〜100重量部の割合で配合されたものであり、該チーズがカレーソース中に均一に溶解されない状態で混合されてレトルトパウチ内に封入されていることを特徴とするものである。また、本発明のもう一つの発明であるレトルトカレーの製造方法は、カレーソース100重量部に対して、溶融温度が130℃以下のチーズを5〜100重量部の割合で配合し、該チーズがカレーソース中に均一に溶解されない状態でレトルトパウチ内に充填された後、レトルト加熱することを特徴とするものである。
【0005】[発明の具体的説明]
[I] レトルトカレーの製造(1) 食 材(a) カレーソース本発明のレトルトカレーの原材料として使用されるカレーソースとしては、小麦粉、バター、マーガリン、カレー粉、肉エキス、野菜エキス、唐辛子エキスや、食塩、砂糖等の調味料を配合して調製した通常のカレーソースである。具体的には、上記カレー粉には、(辛味性)レッドペパー、ホワイトペパー、ジンジャー、(芳香性)クミン、フェニュグリーク、カルダモン、ナツメグ、シナモン、ローレル、メース、コエンドロ、ディル、セロリシード、オールスパイス、キャラウェー、タイム、(矯臭性)ガーリック、クローブ、フェンネル、(着色性)ターメリック、パブリカ等の、十数種〜三十数種の香辛料を混合し、ばい煎し、熟成したものが用いられる。これらカレーソースには、ジャガ芋、玉葱、肉、マッシュルーム等の具を配合したものであっても良い。該具はカレーソース100重量部に対して一般に100重量部以下、更に望ましくは10〜50重量部、特に望ましくは15〜30重量部の割合で配合されたものが好ましい。
【0006】(b) チーズ本発明のレトルトカレーの原材料として使用されるチーズとしては、レトルト中で真空パックしたものを加熱することによって測定された溶融温度が、130℃以下の、好ましくは50〜100℃、特に好ましくは80〜100℃の温度のチーズを用いることが重要であり、これらチーズの具体例としてナチュラルチーズ、プロセスチーズ、チーズフード等を挙げることができる。これらチーズは単独で或いは2種類以上を混合して用いることもできる。上記チーズは、暖かい御飯の上やカレーソースが適度な粘性を保たれる温度である60℃以上の温度では粘調な液状を有していることが好ましい。該チーズの溶融温度が上記温度を超えるものであると溶融せず歯応えが悪いとの欠点がある。また、上記チーズは、カレーソース中に均一に溶解されない状態で混合されて、チーズがカレーソースと分離したツートンカラーの液状の帯状状態を形成することができるものであることが望ましい。従って、ナチュラルカッテージチーズ等の様なレトルト加熱をしても凝固性を保有しているものを本発明におけるチーズとして用いる場合には、摂食時にチーズが堅く、カレーソース中に異物が分散された状態で混入されている様子であり、しかも、硬く、違和感があり、カレーソース全体の円やかな風味を阻害するとの難点がある。
【0007】(c) 量 比上記カレーソースに配合される上記チーズの量としては、カレーソース100重量部に対して、チーズを5〜100重量部、好ましくは20〜70重量部、特に好ましくは30〜50重量部である。該チーズの配合量が上記範囲未満であると、該チーズがカレーソースに全量溶解して、チーズがカレーソースと分離したツートンカラーの液状状態を示すことができなくなるし、レトルト臭を消去又は減少させることができないとか、ツートンカラーでなくなる等の欠点が生じる。また、上記範囲を超えるとカレーとしての食味に耐えられないとの欠点が生じる。
【0008】(2) レトルトパウチ(a) 素 材本発明のレトルトカレーを包装し保存するための包装材料として用いられるレトルトパウチの素材としては、ナイロン、ポリエステル、塩化ビニリデン、エバール、ポリプロピレン等のプラスチックフィルムやアルミ箔等の単体フィルム単独で用いるか、これらを積層したラミネートフィルムが用いられる。一般にはラミネートフィルムが好適に用いられる。
【0009】(b) 充 填上記レトルトパウチ内に、上記カレーソース及び溶融温度が130℃以下のチーズからなる食材を一緒に、或いは、別々に入れて、レトルト加熱した後でも該チーズがカレーソース中に均一に溶解されない状態で混合されて、帯状状態を形成されているものであることが望ましい。該レトルトパウチ内に食材を充填した後、これを真空パックする。上記帯状状態を形成する様に混合された状態とは、カレーソース中にチーズが微粒子状に分散されずに、カレーソースとチーズとが互いに溶解しないで、チーズの不均一な帯状の層を形成する状態に混ぜ合わされたものであり、実際には、カレーソース中に帯状のチーズが波状や渦巻き状等の多数の帯状の層が形成された様な状態のものである。
【0010】(c) レトルト加熱上記真空パックにて包装した後、これを一般に115〜130℃、好ましくは120〜125℃の温度で、一般に2kg/cm2 程度の圧力下に、好ましくは25〜30分間の加熱を行なうレトルト加熱を行なうことによって殺菌処理される。上記レトルト加熱後、水により冷やされる。
【0011】[II] レトルトカレー上記方法によって製造されたレトルトカレーは、レトルトパウチ内に、カレーソース100重量部に対して、溶融温度が130℃以下のチーズが5〜100重量部の割合で配合されたものであり、該チーズがカレーソース中に帯状に混合された状態でレトルトパウチ内に封入されている。該本発明のレトルトカレーを摂食するに際しては、再度加熱されて、暖かい御飯の上にかけられる。暖かい御飯の上にかけられたレトルトカレーにはレトルト臭が感じられず、カレーの匂いのみを嗅ぐことができるので食欲がそそられる。また、見た目においてもカレーソースの色と溶融チーズの黄白色とが波状又は渦巻状の帯状に分離された層状態を形成しているものであり、該層がツートンカラーであることから食欲のそそられる色調を呈している。更に、味わってみると円やかな風味を有している。
【0012】
【実施例】以下に示す実験例によって、本発明を更に具体的に説明する。
[I] 評価方法(1) レトルト臭検査レトルト臭の検査は、沸騰する熱湯等で3分間加熱して、100℃に温めたレトルトパウチを開封して、これを10名のパネラーで臭気に関する官能検査を行なった。
(2) 色調検査色調の検査は、上記100℃に温めたレトルトパウチを開封し、内部のレトルトカレーを出して、これをレトルト臭の検査と同じ10名のパネラーで色調に関する官能検査を行なった。
(3) 味覚検査味覚検査は、上記100℃に温めたレトルトパウチを開封し、内部のレトルトカレーを出して、これをトルト臭の検査や色調検査と同じ10名のパネラーで食して味覚に関する官能検査を行なった。
【0013】[II] 実験例実施例1
上記処方にて常法によりカレーソースを作った。該カレーソースをプロセスチーズ(溶融温度90℃)200gと共にレトルトパウチに真空充填し、包装した後、これを125℃の温度で20分間レトルト加熱を行なった。水冷後、常温にて2週間放置した。
【0014】評 価そして開封し、10名のパネラーで官能検査をした結果、表1の如き結果を得た。また、該カレーソースはカレーソースの色と溶融チーズの黄白色とが分離された状態のツートンカラーであることから全員が食欲のそそられる色調を呈していた。更に、味においては、全員が円やかな風味となっていると感じた。
【0015】
表 1 レトルト臭の強さ レトルト臭を全く感ぜず、カレーの風味が向上していたと感じた者:7名 チーズを配合しない場合(比較例1)に比較してレトルト臭が減少したと感じた者 :3名 チーズを配合しない場合(比較例1)と同じレトルト臭であると感じた者 :0名【0016】比較例1実施例1においてプロセスチーズを配合せずにレトルトカレーを製造した以外は実施例1と同様に実施し、評価を行なった。その結果を表1に示す。
【0017】実施例2
上記処方にて常法によりカレーソースを作った。該カレーソースをダイス状のプロセスチーズ(溶融温度100℃)100gと共にレトルトパウチに真空充填し、包装した後、これを121℃の温度で40分間レトルト加熱を行なった。水冷後、常温にて2週間放置した。
【0018】評 価そして、これを沸騰する熱湯等で3分間加熱した後、レトルトパウチを開封し、10名のパネラーで官能検査を行なった結果、表2の如き結果を得た。また、該カレーソースはカレーソースの黄色と溶融チーズの黄白色とが分離された状態のツートンカラーであることから食欲のそそられる色調を呈していた。また、味においては、円やかな風味となっていた。
【0019】
表 2 レトルト臭の強さ レトルト臭を全く感ぜず、カレーの風味が向上していたと感じた者:8名 チーズを配合しない場合(比較例2)に比較してレトルト臭が減少したと感じた者 :2名 チーズを配合しない場合(比較例2)と同じレトルト臭であると感じた者 :0名【0020】比較例2実施例1においてダイス状のプロセスチーズ(溶融温度90℃)を配合せずにレトルトカレーを製造した以外は実施例1と同様に実施し、評価を行なった。その結果を表2に示す。
【0021】比較例3実施例1におけるプロセスチーズ(溶融温度90)を、溶融温度が150℃の固形チーズに変更してレトルトカレーを製造した以外は実施例1と同様に実施し、評価を行なった。その結果、レトルト臭の強さは大で、しかも、固形チーズは凝固したまま豆腐状になっており、チーズ臭はするが、見るからに異物が混入されている状態なので、食欲のそそられる形状や色調を呈するものではなかった。また、味においては、固形チーズが堅く、カレーソース中に異物が混入されている様な歯応えであり、円やかな風味となっていなかった。
【0022】比較例4実施例1のカレーソースに、チーズ(溶融温度100℃)を加えて加熱し、これを強力攪拌機を用いて乳化状にしたものをレトルト処理して完全にチーズがカレーソースに溶解したものは、レトルト臭の減少が生じなかった。
【0023】比較例5実施例1におけるプロセスチーズ(溶融温度90)の配合量を、カレーソース100gに対して3gに変更した以外は実施例1と同様に行なった。その結果、添加したチーズは見当たらず、レトルト臭の強さは大であった。また、味においては円やかな風味となっていなかった。
【0024】比較例6実施例1におけるプロセスチーズ(溶融温度90)の配合量を、カレーソース100gに対して130gに変更した以外は実施例1と同様に行なった。その結果、レトルト臭の強さは少なかったが、チーズばかりでカレーとしての食味に耐えられなかった。また、味においては円やかな風味となっていなかった。
【0025】
【発明の効果】本発明のレトルトカレーは、再加熱後に摂取してもレトルト臭が感じられないカレーの匂いを発散し、見た目においてもカレーソースの色と溶融チーズの黄白色とが分離された状態のツートンカラーであることから食欲のそそられる色調を呈しており、しかも、味においても円やかな風味となっている。
【出願人】 【識別番号】595078792
【氏名又は名称】ブルドックソース株式会社
【出願日】 平成7年(1995)6月1日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 一雄 (外2名)
【公開番号】 特開平8−322521
【公開日】 平成8年(1996)12月10日
【出願番号】 特願平7−135029