建て替え・高層化が計画されているパレスホテル(手前中央)。皇居がすぐ目の前だ=東京都千代田区丸の内1丁目、本社ヘリから、越田省吾撮影
〈五十嵐敬喜・法政大教授(都市政策)の話〉皇居前は建築家が心血を注いだおちついた街区だったが、皇居の眺望を売り物にする超高層ビルが並ぶ「企業空間」に変わってしまった。欧米の街並みが美しいのは、景観に配慮した計画で規制するからだ。日本では一般の国民が開発内容に意見を述べる手続きが整っておらず、再開発後の景観がわかる全体計画も示されない。地権者の「開発自由」を原則とする法制度を改めるべきだ。
〈丸の内景観論争〉丸の内地区では、ビルの高層化を巡ってたびたび論争が起きてきた。「第1次景観論争」と呼ばれるのが、66年の東京海上ビル(現東京海上日動ビル)の建て替え問題。127メートルの計画だったが、国が介入して100メートルに抑えられた。90年代半ば、丸ビルの高層化計画に対する反対・ビル保存運動が「第2次」で、パレスホテルを巡る動きは、いわば「第3次」。小泉内閣による規制緩和を受け、07年に新丸ビル(約198メートル)が建て替え・開業した後、初の本格論争だ。