建て替え・高層化が計画されているパレスホテル(手前中央)。皇居がすぐ目の前だ=東京都千代田区丸の内1丁目、本社ヘリから、越田省吾撮影
東京都心の一等地、皇居と丸の内ビル街を巡って「景観論争」が持ち上がっている。お堀端にあるパレスホテルの高層化計画に対し、地元の東京都千代田区議会が景観保護へ異例の意見書を議決。市民団体も動き出した。五輪招致をにらむ東京都は都景観条例に基づく区域指定をする方針だが、これに千代田区が反発するなど波乱含みだ。
パレスホテルの計画によると、いまの地上10階、高さ約30メートルを地上23階、約100メートルのホテル棟とオフィス棟に一新する。「高層化で広い客室を確保し、外資系ホテルに対抗する」のが狙いだ。
計画は4月、千代田区の審議会で明らかになった。丸の内地区では地権者と東京都、千代田区の協議会での申し合わせで100〜200メートルの3段階の高さ制限があり、皇居に近いパレスホテルの場所は100メートル。ホテル側は審議会で「高さは精いっぱいがまんした」と強調したが、「もっと低くしないと景観を守れない」と不満が相次いだ。
千代田区議会は7月、「皇居周辺の景観保存」の意見書を議決し、国土交通省などに送った。都市計画法や建築基準法など「現行の法律では環境保全は大変厳しい」とし、「特別の措置を国に強く求める」と結んだ。はずみをつけたのが、宮内庁によるパレスホテルへの申し入れだ。新ホテル棟が皇居内にある2階建ての宮内庁病院の正面に向き合うため、ホテルの客室から病室がのぞかれかねず、建物の向きを変えるなど配慮を求めたという。
一方、歴史的な建物の保存に取り組んできた市民団体も11月、東京・神田でシンポジウム「検証 皇居周辺の景観」を開き、建築家や学者ら100人余りが参加した。千代田区の審議会で会長を務める西村幸夫・東京大大学院教授(都市計画)も出席して「国の役割」を強調。シンポが打ち出した「皇居周辺の景観を守る宣言」は、特に国に対して「大きな責任を負わなければ」と指摘した。