年末の大掃除、今年は子どもと一緒にやってみませんか--。楽しくて、子どもの成長にも役立つ大掃除のコツを探ってみました。【大迫麻記子、清水優子】
「そっちに水かけて!」「ここ、洗えてないよ!」
さいたま市浦和区の小山淳子さん(40)宅のお風呂場で、いずれも幼稚園児の長男・拓也君(6)と、次男・修平君(4)の大きな声が響く。2人はお風呂掃除の真っ最中。修平君がスポンジで磨き、拓也君が水で流す。ほぼ毎週、2人が洗っている。淳子さんは「すすんでやってくれます。私より上手です」と笑う。
どうしてお手伝いをするのか聞くと、拓也君は「褒められるのがうれしい」、修平君は「(浴槽を足でこするのが)スケートみたいで楽しい」とのこと。淳子さんは「掃除は遊び感覚でできるお手伝いだと思います。スポンジと掃除機もおもちゃのように楽しい道具だと思っているようです」と話す。
生活用品メーカー、ライオンのリビングケア研究所が08年10月、関東地方の小学生62人にアンケートしたところ、「掃除が好き」との答えは75%に上った。理由を自由回答してもらったところ、窓ふきでは「スプレーで絵が描ける」、お風呂掃除では「水浴びしながらできる」「スポンジが使えるから」などが目立ち、掃除を楽しんでいることがうかがえたという。掃除をした気持ちでも「楽しい」が63%を占め、「もっとお手伝いしたいですか」との質問には80%が「したい」と答えた。
調査を担当した同研究所研究員、藤村昌平さん(30)は「保護者のやり方次第で、子どもにとって掃除は楽しみになるようだ」と指摘する。
具体的なコツとしては(1)親子で別々の場所を分担するのではなく、窓の表と裏を一緒にふくなど、同じ場所で作業する(2)好きなキャラクターのプリントされたものなど、子ども専用の掃除用具を用意する(3)汚れが見分けやすく、掃除の成果の分かりやすいところから始める(4)できたら褒める--を挙げた。
ただし、子どもにはまだ親の手助けが必要だ。小山さんも「脱衣場までびしょびしょにするから仕上げは私がしますし、手間はかかる」と語る。藤村さんは「子どもに掃除をきちんと教えるには時間がかかりますから、大掃除を良いきっかけにしてみては」と話している。
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学校現場で、掃除が子どもに与える影響を見直す動きもある。横浜市の公立小中高校では、安全面の問題などからトイレ掃除を用務員らが担当してきたが、再来年度から児童・生徒にさせるよう改める。主に学校で子どもや教師、親らとトイレ清掃をしている「日本を美しくする会」(東京都町田市)の千種敏夫副会長は「トイレなどの掃除をすることで、謙虚さや感謝の心、忍耐力などが磨ける。勉強への姿勢が変わり、忘れ物が減るなど生活態度にも変化が表れるようです」と指摘。大田尭(たかし)・東大名誉教授(教育人間学)も「現代の子どもは保護対象にばかりなりがちで、社会参加の機会が奪われている。トイレ掃除は衛生面の配慮が前提だが、社会の一員としての自覚を育て、公共の物を大切にする気持ちをはぐくむ大切な活動の一つ」とその効用を説いている。
毎日新聞 2008年12月14日 東京朝刊