人権大国への確かな一歩に
公明新聞:2008年8月7日
第三国定住制度で「難民鎖国」に決別
難民受け入れ拡大
「難民鎖国」と言われる現状を打開し、「人権大国」建設への確かな一歩としたい。
政府が難民の受け入れ政策を転換する方針を固めた。紛争や政治的弾圧で祖国を追われ、周辺の難民キャンプで暮らす難民を一定の枠内で恒常的に受け入れる「第三国定住制度」の導入を決めたもので、年内にも人数枠などの詳細を詰める予定。より多くの難民に門戸を開くものとして、率直に評価したい。
日本の難民政策は、2004年に公明党の強力な推進で入管・難民認定法が改正されて以来、大きく改善されてはきた。昨年(2007年)1年間の難民申請者を見ても、その数は816人にまで膨らんでいる。
だが、それでも実際の受け入れ数(認定数)は毎年数十人程度で、昨年(2007年)もわずか41人を認定したにすぎない。毎年数千人規模で受け入れている欧米諸国とは依然、大きな開きがある。
この格差を生んでいる理由の一つが第三国定住制度だ。実際、同制度を導入している米国や欧州諸国などの14カ国は、昨年(2007年)1年間だけでもイラクやミャンマーなどから7万5000人もの難民を受け入れている。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)がつくった推薦リストをもとに、第三国が難民の受け入れを入国前に決定する第三国定住制度は、第三国すなわち先進国の認定作業を格段に容易にするだけではない。紛争周辺国の負担軽減や、審査のために第三国に渡る術を持たない「より困難な難民」の救済にも道を開く効果がある。
かつて公明党の「難民政策プロジェクトチーム」の会合に出席したUNHCRのダニエル・アルカル首席法務官も、「第三国定住の受け入れは、日本の難民政策の転換点となる」として早期導入を訴えていた。
それだけに今回の政府の方針転換が持つ意味は大きい。「難民鎖国ニッポン」のイメージを一掃するものとの期待がかかる。
カギは「内なる国際化」
受け入れに向けた具体策は今後、外務、法務などの関係省庁でつくる検討会で詰められるが、課題は少なくない。
第一に、難民選別の基準の問題がある。経済的利害を優先させて、日本にとって都合のよい人だけを選ぶようなことがあっては、制度の趣旨を歪めることになる。ここは、「難民キャンプですら保護を受けられない人々を優先する」という徹底した人道的態度が求められよう。
受け入れ後の環境整備の問題も大きい。日本語習得、就労、医療など、さまざまな面で支援態勢づくりを急ぐ必要がある。
さらに、より困難な課題として、「内なる国際化」の問題がある。難民や移民を含む外国人の受け入れに慣れていない日本の社会に、「多文化・多民族共生」の風を吹き込んでいく作業は容易ではない。「難民政策はその国の人権感覚を映す鏡である」(神崎武法党常任顧問)との認識の下、官民一体となった取り組みが欠かせない。
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