婚外子差別の国籍法は改正を
公明新聞:2008年6月11日
違憲判決尊重し、実務対応も急げ
公明、法相に申入れ
4日の最高裁判決は、法律上の婚姻関係にない父と母の間に生まれた子(婚外子)に関して、日本国籍の取得について、国籍法第3条は不合理な差別をしているとして違憲と判断した。公明党は、現在の家族生活の実態や国際的な婚外子差別撤廃の傾向から極めて妥当な判決であると考える。
この違憲判決を受け、公明党の法務部会(大口善徳部会長=衆院議員)は翌5日、鳩山邦夫法相に申し入れを行い、その中で政府に対し、違憲判決の趣旨を尊重して速やかに国籍法改正の準備に取りかかると同時に、法改正が実現するまでの間、実務上の適切な措置を講じるよう求めた。
今回の最高裁判決で勝訴した子どもたちのように、結婚をしていない日本人の父と外国人の母を両親に持つ婚外子で、日本国籍を取得できない人は数万人いるともいわれる。最高裁は国籍法第3条を憲法第14条の「法の下の平等」に反すると判断した。最高裁の違憲判決はこれまで7回あったが、そのうち4回までが今回と同じ「法の下の平等」違反を理由とした違憲判決であり、すでに立法措置が取られている。「法の下の平等」違反は法治国家の基盤を揺るがす事態であり、今回の違憲判決に対し、子どもの人権の尊重を第一義にした法改正を急ぐ必要がある。
鳩山法相も公明党の申し入れに対し、「親の都合で子どもが不利益を受けることは何としても止めなければならない」と述べ、早期の法改正と共に、今回裁判となった同様のケースで国籍取得を求める届け出があった場合にも受け付ける考えを示した。
今回の裁判では、日本人の父とフィリピン人の母との間に生まれた婚外子の日本国籍の取得が争われた。この婚外子が、出生前に父から認知されていれば国籍法によって日本国籍は取得できた。また、父が外国人で母が日本人であれば当然、日本国籍を取得できた。しかし、この裁判を争った婚外子は出生後に認知されたため、国籍法第3条の規定によって日本国籍を取得するには父母が法律上の婚姻関係になった場合に限られることになり、今日まで“外国人”としての生活を余儀なくされていた。まさに制度のすき間に落ち込んだような事例といえよう。
国際結婚では、父が日本人の場合、認知が出生の前か後か、さらに、両親が法律上の婚姻関係であるかどうか、といった事情で日本国籍の取得に差がつく現行の国籍法は、明らかに婚外子に対する日本国籍取得のハードルを上げた差別的な法律と言わざるを得ない。国籍法が求めている要件は、国際結婚で生まれてくる子どもにとって、いかんともしがたい事情であり、特に、婚外子に対しては重大な不平等である。
人権論議を深めよ
この裁判の第一審で政府は、(1)国際結婚での婚外子は、日本人父と共同生活を送り日本との結びつきが強いとは言えない(2)婚外子を別扱いすることは社会事情、国民意識を反映している――などと主張したものの、東京地裁は2005年4月に違憲判決を下した。だが、高裁では憲法判断をせず逆転敗訴に。今回の最高裁判決も裁判官15人のうち9人の多数意見であり、他の6人中3人は合憲の立場である。
今後の立法論議では困難も予想されようが、国会は人権問題として議論を深め、一日も早い法改正の期待に応えてほしい。
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