いつごろからか、文章を書く時に漢字が思い出せないことが多くなった気がする。日常的に使うごく簡単な漢字なのに、すぐに出てこない。年のせいだろうか。
「意外と書けないよく見る漢字」(水野靖夫著、PHP研究所)に、こんな指摘があった。「ワープロ、ケータイ時代を迎え、手書きをする機会がめっきり減ってしまった。ために漢字が書けなくなった。読めても書けないのである」。
確かに、キーボードを打って文章を作るようになり、漢字への変換もキーの操作でできるようになった。記憶があいまいでも、打てば漢字が出る。便利に違いない。
かといって、読めさえすればいいわけでもない。大体「書く力」といえば文章力のことだが、漢字を書く力が落ちれば、国語の能力は衰退してしまう。
恒例の「今年の漢字」に決まったのが「変」である。次期米大統領に選ばれたオバマ氏の訴えた「チェンジ(変革)」。そして、さまざまな異変に見舞われた今年一年を象徴している。「変」には「移り変わり」「災害や事件」「普通でない」など、異なる意味合いがある。
一字一字の持つ豊かな表現力が漢字の特徴だ。実際、一画ずつ書いてみると、キーを打つのとはまた違った重みが感じられる。下書きだけでもいい。あえて手書きをお薦めしたい。