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T先生
原爆線量評価の初期の頃、米国の研究者は、爆発する時には、すでに、厚い鉄の外側構造物は、吹き飛ばされてなくなっているために、放出される核分裂中性子の"中性子エネルギースペクトル"は、核分裂スペクトルで近似できると考えて計算していました。しかし、広島原爆の線量の測定値と計算値の有意な差から、実際には、そうではなく、外側構造物がある状態で、中性子が透過・放出されるため、核分裂スペクトルから大きく異なり、中性子の鉄による吸収・散乱のために、"中性子エネルギースペクトル"に特徴的なゆがみが生じることが分かり、決定論的放射線輸送計算コードを利用して詳細に計算されました。
いただいた資料(「「広島・長崎原爆線量評価新評価システムDS02に関する専門研究会」報告書」、KURRI-KR-114(2004))を熟読・吟味してみました。p.127に、米ロスアラモス研究所のWhiteらによって、連続エネルギーモンテカルロ計算コードMCNPで計算した広島・長崎原爆の中性子とガンマ線のエネルギースペクトルが示されていますが、広島原爆と長崎原爆の"中性子エネルギースペクトル"の本質的な相違点は、1eV-1keV領域において、長崎原爆の方が約三桁くらい大きく、原因は、プルトニウムの周囲に配置されていた2.5tの火薬の原子番号の小さな構成原子の原子核による中性子減速効果によるものでしょう。そのために、長崎原爆は、広島原爆と異なり、Pu原子核の共鳴エネルギー領域におけるドップラー効果によるマイナス反応度の印加が予想以上に大きいものと推定されます。
p.126に、Whiteらの計算条件が記されていますが、たったひとつ重要な条件が欠落しており、それは、計算に利用した中性子断面積の編集温度です。他の計算例から推定すると、原爆線量評価の研究者は、みな、300Kのものを利用しているように解釈されますが、それでも大差ないでしょうが(固有値問題では、有意な差が出るでしょうが、線量評価のような固定源問題では、差は小さいかもしれません)、厳密には、1億℃くらいのものを利用しなければ、整合性が保てません。そのあたりはエンジニアリングジャッジしているのでしょう。その点がやや気になりました。
桜井淳
三つの統合事務所の英語版HP(第一版、米プロバイダーHP利用)は、"カリフォルニア"スタッフによって作成・公開されており、その内容は、表題といくつかの項目からなるわずか1頁の簡単なもので、今度(第二版)は、日本国内の第三者の協力者にお願いし、作成について、一切、条件を付けずに、すべて、第三者の判断に任せ、桜井淳所長やスタッフとはまったく異なった視点から、編集していただくことになっており、どこのプロバイダーのどのような利用条件のものかも、すべて任せてあるため、公開されるまで、桜井所長と三つの事務所のスタッフは、何も知らないことになります(知っていることは作成に数週間かかるということだけです)(なお、ブログの英語版は、作業量が著しく増えるために、現実的には、対応不可能です)。