◎1ドル90円割れ ビッグ3救済へ緊急融資を
日本からすれば、迷惑千万と言いたいところだ。米上院で米ビッグスリー(自動車大手
三社)救済法案の採決に失敗したことが引き金になり、急激に円高が進行し、東証をはじめアジアの株式市場が暴落した。
ビッグスリー救済を市場はほぼ織り込んでいただけに、衝撃は大きく、一ドル=八〇円
台をつけたのは実に十三年ぶりである。このところ落ち着きを取り戻していた株式市場は一時六〇〇円以上も下落し、市場のムードは一変してしまった。雇用環境の悪化で、消費者心理が冷え込んでいるときだけに、円高が追い打ちをかけた格好になったのは残念だ。
今後の焦点は、米政府が金融安定化法の公的資金を使って、つなぎ融資を決断するか否
かに移る。緊急融資がなければGMとクライスラーは年内にも破たんする可能性があり、世界経済を大混乱に陥れるだろう。新たな金融危機を避けるためにも、米政府は緊急融資を決断してほしい。
ビッグスリーの救済法案は、既に下院で可決され、上院を通過すれば、百四十億ドルの
公的資金投入に道筋がつくはずだった。土壇場でつまずいたのは、共和党から内容が甘すぎるとクレームがついたためである。共和党のコーカー議員は▽労働者賃金を日系自動車メーカー並みに引き下げる▽再建目標を達成できない場合は破たん申請適用、などを盛り込んだ修正案を提出したが、協議は決裂した。
米国の銀行は、ビッグスリーの社債を大量に保有している。このまま破産申請に追い込
まれたら、経営危機に陥る銀行が出てくる可能性がある。
社債だけでなく、市場ではクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の存在が新た
な火種として意識されてきている。CDSは貸付債権に債務不履行が発生した際に実施されるオプション取引を言うが、ビッグスリーのCDSは二千五百億ドルに達するとの見方がある。肥大化した金融商品のツケは極めて重く、世界経済の新たなリスク要因になってきているといえよう。米国といえど、軟着陸以外の選択肢は取りようがないのではないか。
◎BCリーグドラフト 地域貢献でも「即戦力」に
プロ野球独立リーグ・BCリーグのドラフト会議で、石川ミリオンスターズに指名され
た県内の高校生二人を含む五人を、まずは祝福したい。スタンドをわかせ、勝利を呼び込むプレーとともに、地域貢献活動での活躍にも大いに期待したいところである。球春はまだ少し先だが、地域貢献活動にシーズンオフはないのだから、「即戦力」として積極的に地元に飛び込んでほしい。
特に、県内高校の二人については、選手としてはもちろん、スポーツを通じてふるさと
の発展に寄与する「スポーツ市民」としても大きく成長し、地域密着球団の先頭に立つ存在になってほしいと、今から楽しみにしているファンも少なからずいるだろう。同期の他の三人、さらには先輩選手も引っ張るくらいの気構えを持って入団してもらいたい。
BCリーグは来年で三シーズン目を迎えるが、ミリオンスターズが県内の高校生を指名
したのは初めてである。二人が見本になってくれれば、後に続きたいと努力する球児も増えよう。
BCリーグでは、各チームがそれぞれの地元で地域のためになる活動に力を注いでいる
。ミリオンスターズも、出張野球教室を開いて少年たちを指導したり、小学六年生の総合的な学習で「ゲスト教師」を務めたりと、今オフも多彩な活動を展開している。まだ歴史こそ浅いものの、こうした活動は各チームのよき伝統として徐々に定着してきたと言っていいようである。新人選手には、この伝統を受け継ぎ、より一層発展させてもらわなければならない。
BCリーグの魅力は、何と言っても選手とファンの「近さ」であり、地域貢献活動は、
ファンとの距離を縮め、ファンのすそ野をさらに広げるためにも、間違いなく有効だろう。ドラフト会議が終わり、来シーズンに臨む戦力がほぼ整ったわけだが、V奪回への道のりは平たんではなく、苦しい場面が幾度もあるに違いない。そんな時、温かい声援と拍手で背中を押してくれるのが地元ファンであることを、先輩選手からもしっかり伝えてほしい。