「ボロボロの肺を見せてもやめてくれない」。禁煙を推進する県立医療大の佐藤功教授(59)はこう嘆く。「健康のため」は動機づけとしては弱い。2年以上禁煙している私の意見だ▼社内では、妻との交際が私の禁煙のきっかけということにされている。正解だが、やめた理由はもう一つある▼アスベスト(石綿)被害の取材で、支援団体の一人に「たばこを吸うやつは認めん」と言われたのだ。確かに、肺を病んだ人に寄り添おうと思うなら喫煙はおかしい。返す言葉がなかった▼先日、私が書いた石綿を巡る自殺問題の記事を見て、彼が電話をくれた。「よう書いた」。評価してくれたようだった。心の中の引っかかりが一つ取れた気がした。【大久保昂】
毎日新聞 2008年12月13日 地方版