京都と韓国、自身のルーツである二つの地の風景を描き続ける左京区の在日2世の画家、金愛子さん(52)の個展が11~14日、中京区の京都文化博物館で開かれる。
京都市出身の金さんは、京都韓国高校卒業後、いったん就職したものの、夢だった画家の道があきらめきれず退職。梅原龍三郎ら多くの洋画家を輩出した関西美術院に入学し油彩などを学んだ。卒業後はアルバイトをしながら、毎日欠かさず洛北を中心に絵筆を取り続けてきた。
柔らかな色彩の濃淡で表現するのは、大原の棚田や集落、ゆるやかな山並みなど、人々の暮らしと自然が混然一体となった里山の情景。夜明けや夕暮れ時、雪の日などの弱い日差しの中に浮かび上がる風景はどことなく懐かしさを感じさせる。金さんは「季節が移ろうのを感じながら、自然を描けるのが喜び」と語る。
一方で、印象派の画家、ピサロの田園風景を目の当たりにし、母の故郷であり芸術を愛する詩人だった祖父が長年暮らした韓国・全羅北道の南原で描いてみたいと思うようにもなった。卒業後、2~3年に一度は韓国に渡り、約1カ月の滞在で制作している。
今回は洛北と韓国双方の作品を展示。「日本も韓国も自分を成長させてくれた特別な国。開発により変わってゆく風景を描き留めておきたい」と話す。【手塚さや香】
毎日新聞 2008年12月11日 地方版