【健康】エイズ予防は今…(上) HIV感染の即日検査 無料、匿名で詳しい説明も2008年12月5日 エイズ発症につながるHIV感染の即日検査、夜間検査を実施する保健所などが増えてきた。従来の「平日の昼間に受けて一週間後にまた結果を聞きに行く」という形に比べると、とても便利だ。即日検査を体験した。 (安藤明夫) 名古屋市では毎月第二、第四日曜日の午後、市青少年文化センターで即日検査を実施している。 電話予約すると「I451」という受付番号を告げられた。無料・匿名の検査で、この番号が私の“名前”だ。指定された夕刻に受け付けを済ませると、待合室には五人の受検者がいた。みんな黙って雑誌を読んでいる。外国人に付き添う通訳ボランティアもいる。 番号を呼ばれ、別室へ。市の委託で即日検査を運営する「HIVと人権・情報センター」の女性スタッフから事前説明を受けた。 検査は、ウイルスが侵入した際に血液内にできる抗体の有無を確かめるもので、二時間ほどで結果が出る。陰性なら無事終了だが、陽性だった場合は追加確認の詳しい検査をして、一週間後に結果が分かる。感染が確定すれば、医療機関の紹介、カウンセリングなどのサービスを受ける。 「エイズは、昔は怖い病気だと思われていましたが、今は薬があり、ウイルスの量を減らすことができるようになっています。コントロールしていけば寿命まで生きられる病気です。薬も健康保険が使え、自分で負担する額はわずかです」とスタッフ。 そして採血。他の人と顔を合わさない部屋で計十ミリリットル。あっという間に終わった。結果を聞く時間まで、書店や喫茶店で過ごした。絶対に大丈夫という自信はあっても、合格発表を待つ受験生のように不安が頭をよぎる。 待合室に戻ってほどなく番号を呼ばれ、再び別室へ。「陰性」の結果を告げられた後、「これからも感染のない生活を送るために」と、スタッフが二体のぬいぐるみやコンドームを使って、感染の仕組み、防止方法を説明してくれた。ペニスとか膣(ちつ)といった言葉に照れくさい気分になったが、大切な知識だ。 ◇ 早期治療や感染拡大防止に役立つ抗体検査だが、厚生労働省のエイズ動向委員会の調査では、昨年、全国の保健所などで検査を受けた人は、約十三万人。即日検査、夜間検査の広がりとともに、五年間で倍増したが、まだまだ少数。昨年のHIVの新規感染者は千八十二人、新規エイズ患者は四百十八人とそれぞれ過去最高を記録した。 また、即日検査の実施機関は全国で約三百十カ所、夜間検査も約百五十カ所で受けられるが、都道府県ごとの格差も大きい。即日検査の機関が一カ所しかない三重県の保健所の感染症担当者は「保健所の人減らしが進み、新型インフルエンザ対策にも追われて、啓発活動もできない。検査態勢を充実させれば、受検者は必ず増えるのに」と嘆く。「国民の意識の遅れ」だけの問題ではなさそうだ。 <HIV> ヒト免疫不全ウイルス。感染して免疫力が低下し、さまざまな合併症を引き起こした状態がエイズ。血液、精液などを通じて感染する。HIV検査機関の情報は「エイズ予防情報ネット」のホームページで。
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