首都直下地震が起きた場合、消防隊員も、けが人を治療する医療施設も圧倒的に足りなくなる。こんな問題点が、国の中央防災会議が12日に発表した応急対策計画で明らかになった。
計画は、東京湾北部を震源とするマグニチュード7.3の地震が、冬場の夕方6時に発生するという想定に基づき立てられた。東京と茨城、埼玉、千葉、神奈川の1都4県で死者は1万1千人、全壊や焼失する建物は85万棟に達するという。
このうち41万棟が焼失する都内では、地震発生から12時間後には消防隊員4760人が不足する。被災地以外の消防組織や自衛隊の消防隊が応援に駆け付ける計画だが、この時点で都内に到着できるのは2690人と必要数の6割に満たないことが分かった。
こうした事態に対応するため、中央防災会議は今回、(1)被災した4県に行く予定の応援部隊を状況に応じて都内に投入する(2)被災地に派遣できる応援部隊を増やすとともに、住民による防災組織も今後強化する――ことを計画に入れた。
想定されるけが人は重傷・軽傷あわせて1都4県で21万人だが、治療に必要な施設や人員がどの程度不足するかは現時点では全くわかっていない。「想定通りの被害なら、いくらいても足りないというほどの状態となる」という理由からだ。計画では、「一般の建物やテントを利用してできる限り治療する」という方針を出すにとどまった。
被災地には自衛隊の基地や羽田空港など6カ所の搬送拠点を置き、航空機やヘリで北海道〜福岡県から180の災害派遣医療チームを入れる。逆に、大やけどをしたり、頭や胸に大けがを負った重傷者はこの6拠点から空路で運び出す。搬送者数は阪神大震災の約400人に準じて423人を目標としたが、1都4県の想定重傷者3万7千人と比較すれば1.1%にとどまる。(神崎卓征)