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トリビューンの破たん、メディア業界の試練幕開けか

 ニューヨーク(ウォール・ストリート・ジャーナル)米メディア業界が独自版のサブプライム危機に突入しようとしている。

 「ロサンゼルス・タイムズ」、「シカゴ・トリビューン」などの発行元である米トリビューンが8日、米連邦破産法11条の適用を申請した。メディア業界はこれで、向こう数年続く、債権者主導のうんざりするような再編の幕を正式に開けたもようだ。いみじくも、シカゴの有力投資家サム・ゼル氏が主導した82億ドルでのトリビューン買収から、あと数日で1年が経つという時期に当たった。同社がこれほど多くの負債を抱え込み、滑り出しから転覆の危険に瀕していたのは、この買収が原因だった。

 トリビューンの案件は、不良化した住宅ローン市場を生み出したのと同じ、高慢な思考――かいつまんで言えば、よい時期が永遠に続き、資産価値も上昇し続ける――が他業界の取引にも感染したことを示す証拠となった。これは明らかにメディア業界に当てはまる。メディア業界での100億ドルを超えるレバレッジド・バイアウト(LBO、買収先企業の資産を担保とした借り入れによる買収)は、過去3件にとどまるが、トリビューンがその1つ。その他の2件は、昨年初めの米スペイン語テレビ局ユニビジョン・コミュニケーションズ(約123億ドル)、今年7月の米ラジオ最大手クリアチャンネル・コミュニケーションズ(約180億ドル)の案件。

 さらに、ここ数年で数多くの小規模な取引が行われたことから、数紙の発行元が過大な債務負担を抱えて苦戦を強いられている。

 こうした取引の一部にみられるように、買収する企業にできるだけ大きいレバレッジをかけることは、最良の時期であっても賢明とは言いがたい。スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)の推計によると、9月時点のトリビューンの120億ドルを超える債務負担は、同社の年間EBITDA(利払い前・税引き前・償却前利益)の11倍強に相当した。景気情勢に左右される広告収入にエクスポージャーを持つ企業にとっては特にやっかいだ。長期の低迷に直面する新聞などの業界企業にとっては悲惨な結末をもたらす可能性もある。

 だが、この教訓を身をもって学ぶ最後の企業は、おそらくトリビューンではないだろう。

 (12月9日付のHeard On The Streetより)

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