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強制送還されたフィリピン女児が手紙/苦しい生活訴える
- 社会
- 2008/12/12
昨年、横浜からフィリピンに家族と一緒に強制送還された女児が、特定非営利活動法人(NPO法人)の外国人支援団体に手紙で窮状を訴えている。女児は日本で生まれ育ち、日本語しか話せない。言葉の壁と食事も満足に取れない貧困にさらされ、女児の兄は健康を崩した。罪のない子どもが異国のような母国に放り出され、悲惨な状況に置かれており、同法人は「このきょうだいが笑顔を取り戻すためにどうすれば」と悩んでいる。
手紙は、フィリピン・ミンダナオ島に住むマリア・パストルさん(12)が、横浜市市南区の在日外国人教育生活相談センター「信愛塾」のセンター長、竹川真理子さんにあてた。
マリアさんは同区で父フロレンシオさん(43)と兄ジョマールさん(14)、弟アルピーさん(11)と暮らしていた。きょうだい三人はいずれも日本で生まれ育ったが、フロレンシオさんの超過滞在が発覚、二〇〇七年三月に強制送還された。
一家は本国に戻った当初一緒に暮らしていた。政情不安定で貧困な生活。フロレンシオさんの仕事も見つからなかった。マリアさんは横浜に住んでいたころから交流のある竹川さんに折々の生活状況を手紙で知らせていたが、今秋に届いた手紙は切実なものだった。
手紙によると、ことし三月、マリアさんだけ遠く離れた別の町の親類宅で過ごすことに。学校や生活にも慣れてきたが、ジョマールさんが親類にメールを出したことを知った。そこにはこう書かれていた。「オレはもうどこへ行くのか分かんねぇ。助けてくれ」
「私は話を聞いて泣きそうになりました。毎日私の心がどんどん閉じてくるような感じがする」。マリアさんは心境をつづった。
ジョマールさんとアルピーさんは毎日ラーメンだけの食事で非常にやせた。そして、ついにジョマールさんは入院したという。
「私のきょうだい死んじゃうよ!! 竹ちゃん助けて下さい!」
竹川さんは昨夏、同国に一家を訪ねた。言葉の壁がストレスであるためか、ジョマールさんは「学校に行きたくない」と訴えた。マリアさんの手紙を読み、竹川さんは「ジョマールは日本では成績が良くて感受性が豊かな子だった。今は言葉の壁で自尊心がずたずたになっていると思う。心身の健康が本当に心配。彼からの手紙も途絶えている」と案じた。
信愛塾理事の大石文雄さんも、この三人きょうだいを日本にいたころからよく知っている。「罪がない子が悲惨な環境に置かれているのに、強制送還した後のことは知らない、ということでいいのか」と怒る。
一家が日本で暮らしていたころ、フロレンシオさんのまじめな仕事ぶりに信頼を寄せていた雇用主の社長や信愛塾は、法務省に特別在留許可を求める嘆願書を出したが、許可は下りなかった。強制送還時、ジョマールさんは中学校進学目前だった。
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