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【社説】

緊急景気対策 年末までの実行が勝負

2008年12月13日

 政府が生活防衛のための緊急対策を発表した。景気は非常事態であり、麻生首相の決断をひとまず評価したいが、問題は実行力とスピードである。今回は細目を詰める段階で、もめないように望む。

 ようやく国民の危機感が伝わったのか。政府の対応策は迷走に迷走を重ねていたが、麻生首相が腰を入れ直したかのように、夕方の緊急記者会見に臨んだ。

 政策メニューには、雇用対策と政策減税、さらに中小零細企業の資金繰りを支援する金融措置などが重点項目に並んだ。なかでも雇用が最重要課題であるのは、言うまでもない。

 自動車や電機メーカーなどが一斉に派遣社員や期間従業員の雇用削減に動いており、年末を控えて社宅を追い出される人々もいる。企業に助成金を出して、解雇社員の住宅と生活を支援するのは異例だが、発想はうなずける。

 年内となると、残りわずかの期間しかない。政府方針に沿って、企業側も柔軟な対応が必要だ。

 首相がこだわった「地方が自由に使える一兆円」は雇用創出等のための地方交付税増額の一兆円に振り替わった。ここは少し心配だ。首相は雇用に力を込めたが「等」の一文字が入ったことで、他に流用されないか。地方自治体側も真に雇用拡大につながる使途に知恵を絞ってほしい。

 雇用創出のための基金創設も盛り込んだ。どのような事業を想定しているのか不明だが、民間の知恵と人材をぜひ活用すべきだ。役人が危機に乗じて、既得権益と縄張りの拡大を図るような動きを許してはならない。

 財源には、財政投融資特別会計の金利変動準備金など「埋蔵金」の活用を挙げた。もともと積立金などは非常時に備える意味もあったはずだ。この際、各省庁が所管する他の特別会計も精査して、不要不急の埋蔵金は根こそぎ使い切る覚悟で臨むべきだ。

 首相は与党税制大綱が明示を避けた消費税を二〇一一年度に引き上げる方針をあらためて表明した。景気回復と大胆な行政改革を前提に挙げたが、行革の決意はどうも心もとない。

 当面の課題だった独立行政法人「雇用・能力開発機構」の解体方針が一転して、厚生労働省が所管する別法人に統合され、実質的な存続が決まった。こんな調子で「大胆な行革」ができるのか。

 増税が責任政党の仕事というなら、まず足元の改革を着実に断行していく必要がある。

 

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