予想どおり北朝鮮の時間稼ぎに終わったようだ。北朝鮮による「核計画の申告」の検証に関して進展はなかった。この問題であいまいさを残せば、将来の禍根になる。仕切り直しのつもりで。
北朝鮮の核をめぐる北京での六カ国協議は五カ月ぶりだったが、成果がないまま、休会となった。
焦点は、さる六月に提出された北朝鮮の「核計画の申告」についての検証方法の明文化だった。
日米韓などは、核関連施設からのサンプル(試料)採取を合意文書に盛り込むよう強く求めたが、北朝鮮ははじめから受け入れる気がなかったようだ。
試料採取は、核兵器の原料に使われるプルトニウムの抽出量を知るために欠かせない作業だ。昨年十月の六カ国協議で、北朝鮮は「すべての核計画の正確な申告」で合意している。
確認のため、国際基準による検証受け入れは当然であり、かたくなな姿勢は極めて遺憾だ。
北朝鮮の「核放棄」は、昨年末から「第二段階措置」にある。核施設の無能力化とともに、検証も十月末に終了する予定だったが、大幅に遅れている。
ただ、今回は米国にも責任の一端がある。来年一月にブッシュ政権の任期切れを控えて、外交成果を挙げるため焦りがあった。
検証については、十月の米朝協議で「科学的措置」をとることで合意したが、「試料採取」については口約束だけだったという。
それなのに、米国は大きな「カード」である北朝鮮に対するテロ支援国家指定を解除した。拙速のそしりを免れない。
また北朝鮮は、ブッシュ政権に見切りをつけ、民主党のオバマ次期大統領の対話路線に期待をかけている。足元をみたのである。
次の六カ国協議は、一月二十日にオバマ大統領が就任し、態勢を整えてからになりそうだ。
新大統領は、仕切り直しのつもりで、まずは「核の完全放棄」への強固な意志を鮮明にして、北朝鮮に伝える必要がある。
さらに、これまでの対北外交を参考にしてほしい。今回の六カ国協議を見ると、「焦りは禁物」であることがよくわかる。
同じ民主党であるクリントン政権の一九九四年には、米朝枠組み合意をつくったが、「施設凍結」という中途半端な措置にとどめたため、結果として核開発を許してしまった。
いくつかの苦い経験から多くの教訓を引き出せるはずだ。
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