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【主張】6カ国協議 米はテロ指定解除撤回を
北朝鮮の核をめぐる6カ国協議首席代表会合が成果なしに閉幕した。核申告の検証手順で最大の焦点となったサンプル(試料)採取を北朝鮮が拒んだためだ。
5カ月ぶりの首席代表会合は、北が提出した核計画申告の内容を検証する詳細な手順を6カ国の正式文書とする作業に集中した。申告はあいまいな点が多く、中でも原爆に使われるプルトニウムの抽出量を科学的に究明するための試料採取は不可欠となっていた。
この問題でヒル米首席代表は10月の米朝協議で「北と了解に達した」と胸を張り、ライス国務長官は見返りにテロ支援国家指定解除に踏み切った経過がある。ところが北は先月、「検証は現場訪問、文書確認、技術者の聴取に限られる」と試料採取を拒絶した。ヒル代表の「了解」は口約束にすぎなかったこともわかった。
問題はそれだけではない。北は核施設無能力化の見返りとなる重油100万トン相当のエネルギー支援が完了するまでは検証に着手させないという。検証面の合意の成否にかかわらず、支援は必ず取るという態度が明白だった。
米国は核無能力化、核申告の検証、見返り支援を柱とする「第2段階の措置」の完了にメドをつけ、オバマ政権につなげたかったが、完全に当てがはずれた。
北は指定解除や経済支援を確保して次期米政権との交渉に臨む算段のようだが、今回はロシアも厳密な検証を求めて日韓と足並みをそろえた。厳密な検証を実現し、核廃棄の道筋を着実に進めるという目標を見失ってはならない。
物別れとなったのは遺憾だが、あいまいな決着で将来に禍根を残すよりはましだった。交渉相手が代わっても、果たすべき義務は変わらないことを北に強く認識させるためには、日米韓と中露の結束をさらに深めることが必要だ。次回日程は未定だが、それまでの期間は6カ国協議のあり方を冷静に見直す機会ともすべきだ。
とりわけ北の口車に振り回されて協議を空転させたヒル代表らの責任は重大だ。日本など同盟国の忠告を押し切って、テロ指定解除のカードを無にしたライス長官の判断も問われてしかるべきだ。「北が約束をたがえた」というなら、米政府は北の行動を改めさせるために指定解除の撤回を真剣に検討すべきだ。それが「行動対行動」というものである。