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社説:北朝鮮核問題 米政権移行期にスキ見せるな

 北京で開かれていた6カ国協議の首席代表会合が成果なく終わった。核計画検証方法の文書化に北朝鮮が応じないことを見極めた時点でヒル米国務次官補は中座し、帰国した。事実上の決裂である。

 米国務省報道官は「検証の合意なしでは前に進めない」と明言し、北朝鮮が応じないなら米国も他の参加国も「義務」を果たさないだろうと述べた。寧辺の核施設の無能力化に対する見返りのうち、重油約45万トン相当分のエネルギー・経済支援が残っている。これを止めれば北朝鮮の猛反発は必至だ。

 米国がテロ支援国家指定の解除を遅らせた時、北朝鮮は核施設の無能力化作業を止めるどころか逆戻りさせた。かつて交渉にミサイル発射や核実験を活用したこともある。米国はブッシュ政権からオバマ政権への引き継ぎ、外交戦略練り直しという不安定な時期だ。北朝鮮の揺さぶりがあっても付け入るスキを与えないよう、特に日米韓3国の結束を固めるべきである。

 顧みれば、ブッシュ政権は北朝鮮についても判断ミスが目立った。高濃縮ウラン開発疑惑を理由に北朝鮮との対話を拒否して、交渉による危機管理の道を自ら閉ざした。北朝鮮の核実験を受けて柔軟路線に転換した後は逆に、過大な譲歩を重ねた。マカオの銀行にあった北朝鮮関連口座の凍結問題で、せっかく制裁の効果が表れ始めたのに変則的な手法で凍結を解除したのがその一例だ。

 昨年の6カ国協議で合意した2件の文書にも、今になってみると北朝鮮の「抜け道」になる文言やあいまいな部分が潜んでいる。こうした詰めの甘さが典型的に表れたのは、北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除の理由にした米朝間の「合意」だ。ヒル次官補に北朝鮮が核関連物質のサンプル(試料)採取を認めたという発表だったが、北朝鮮は否定した。北朝鮮との口約束は無意味に等しいという常識が欠けていた。

 もっとも、この経緯があったために明確な文書が不可欠だという論理が説得力を増した。文書化を最も強く主張したのは日本である。将来に重荷を残すような北朝鮮への譲歩を封じたことは、評価されてよい。

 しかし、日本も安心してはいられない。焦点は既にオバマ政権に移っている。その外交政策が固まらないうちに米朝直接交渉を余儀なくされ、性急な合意に応じてしまう可能性を排除できない。また、6カ国協議で核問題を解決するには中国が北朝鮮への影響力をこれまで以上に発揮する必要があるが、民主党政権が中国にこの厳しい注文をつけられるか。そして、ブッシュ大統領が少なくとも表面的には維持してきた日本人拉致問題への理解を、オバマ大統領は継承するのか。

 こうした懸念への早めの対処が不可欠である。

毎日新聞 2008年12月13日 東京朝刊

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