ニコラ・サルコジ氏がフランス大統領に就任して1年半が経過した。新聞の社会面をにぎわすだけの大統領という表面的な見方は間違っている。社会党を取り込み、保守的なフランス人の考え方に楔(くさび)を打ち込んだサルコジ氏は、12年の任期までに大きな改革を成し遂げるかもしれない。
サルコジ改革の重点目標は雇用の確保、国民の収入増加、雇用制度改革である。国家予算の編成では、法定労働時間を超える超過勤務手当にかかる所得税と社会保険料負担を撤廃。また「ミニマム・サービス法」により制限のなかった公共機関のストを最長8日間とし、パリ交通公団とフランス国有鉄道にスト期間中の最低限の運転を義務づけた。これらの構造改革は、社会党のミッテラン大統領のもとで10年間補佐官を務めたジャック・アタリ氏を委員長に委嘱して作成した勧告書を基にしている。社会党も巻き込んだ構造改革にサルコジ大統領のプラグマティズムが垣間見える。
フランスでは1895年に社会主義的な労働組合が結成され、19世紀末以降7人の社会党系大統領と1人の社会党所属の首相が政権を担当してきた。当然労働者保護的な政策が多く、公務員の待遇も良い。これらがフランスの労働生産性を低くしてきた原因であり、国民も改革の必要性を認めているが、その実行を躊躇(ちゅうちょ)している。
サルコジ大統領はEUの共通政策である労働力移動の自由化という流れを背景に、経済政策や法律によりフランス国民を改革へ向かわせようとしている。最近の世界的な景気後退の中で改革の実行は容易ではないが、サルコジ大統領はその行動力をフルに発揮して改革をやり遂げるだろうという期待を抱かせる。(皓)