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問われる腎移植

移植受けた2患者が証言 医師説明と矛盾

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師(66)の執刀で病気だった腎臓の移植を受けた患者2人が8日、読売新聞の取材に応じた。ネフローゼを患った両方の腎臓の摘出後に腎移植を受けた男性は「病気の患者からの提供とは聞かなかった」と話す。一方、腎臓がんの患者から提供を受けた男性は「がんとは聞いたが、説明は10分ぐらいだった」と明かした。ともに「移植に感謝している」と語ったが、「患者には十分に説明した」という万波医師の説明とは、矛盾する証言だ。

「病気腎、聞いてない」


ネフローゼの両方の腎臓を摘出、その後、病気腎移植を受けた男性。「病気腎と聞いていたとしても移植を受けただろう」と話す(愛媛県宇和島市内で)

 ネフローゼだった宇和島市の無職男性(53)が両腎の摘出を受けたのは2004年9月。「腎臓があるからたんぱく質が漏れる」と説明され、「取ってほしい」と自ら希望。摘出腎を移植に使うことも了解した。人工透析を続けた後、12月に母親の腎臓を移植されたが、1か月余りで機能せず、透析に戻った。

 「移植に使えそうな腎臓が出そうだ」。そう告げられたのは今年2月。4日後には移植手術が行われた。

 手術前、万波医師は「腎機能は正常にはならないが、普通に生活できる。ただし腎臓の状態によって移植できない場合もある」と説明したが、どういう人から来るかは明かさなかった。

 入院患者の間では「どこから腎臓を探してくるのか」と不思議がる声も出ていた。しかし「私は腎臓の出元など聞く気はなかった。透析から離脱したい一心だった」と男性は振り返る。

「腎臓がん、説明10分」

 今年5月にがん患者から提供を受けた同県内の50歳代の男性は、2度目の病気腎移植だった。その1年半前の移植では「腎臓を摘出しないといけない人がいる。それでよければやらないか」と言われただけで、病気の種類の説明はなかった。腎臓が働かなくなり、透析に戻った後、万波医師から連絡があった。

 「がんの腎臓が出たが、どうするか。がんを完全に切り取って移植すれば機能する」。不安になって「再発や転移の心配はないか」と何度も尋ねたが、答えは「大丈夫だ」。その間、わずか10分程度。翌日には移植が行われた。

 手術後にがんの検査を希望すると、「心配せんでもええ」と言われ、特別な診察は受けていないという。

 「実験台のような気もするが、納得している。がんが再発しても恨むつもりはない」と男性は話した。

 万波医師は7日の記者会見で「後から“ボロ腎臓”を植え付けられたと文句を言われるんじゃないかと考えたから、本人だけでなく家族にも十分説明している。説明抜きではできない」と強調していた。

2006年11月09日  読売新聞)
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