西村政務次官発言を葬るな
国会で堂々と核議論を!!
衆議院議員 西村眞悟
私の防衛論 衆議院議員(自由党所属)西村 眞悟
内閣改造から僅か二週間余、臨時国会を目前にして、防衛政務次官の西村眞悟氏が辞任に追い込まれた。西村氏が「核武装の是非について、国会で議論しよう」と述べたことが、その理由だった。マスコミと、マスコミによってリードされた世論はこの重要な問題提起を叩き潰してしまった。米国の「核の抑止力」によって守られている日本において、なぜ国会は核論議を恐れるのか。
戦後の「念仏民主主義」の主導者であるマスコミが正当な問題提起を葬り去ってしまったのだ。日本の悲劇がここにある。
自ら省みて直くんば一万人と雖吾行かん!
私は小渕改造内閣で防衛政務次官に就任した。しかし僅か十六日後の十月二十日、同次官を辞任することになった。今回、私が「国会で核の論議を行おう」と問題提起したのは、この日本国を愛しているからだ。断じて、私利私欲からではない。国防という、国にとっての最重要課題をタブーなしで論議しようというのが,私の真意なのだ.。しかし、マスコミの風潮は,かくの如き騒動においては,人格なき粘土のようにまとわりつき、事実に反することが大報道された。この中にあって私を支えたものは支援者一人一人の励ましと、自ら省みて臆することなしという確信であった。
戦後において「国防」は無視され、具体的な議論の欠落した領域であった。しかしながら、この領域が破綻すれば国民にいかなる惨害をもたらすかは、阪神大震災がその一端を見せたのだ。したがって、「東京を火の海にする」と声明して、核を保有しようという国家が存在する現在、我々は核からいかにして国家と国民を守るかという重要課題について議論をするべきなのだ。しかしながら、この核問題はタブーであり、国会はこのタブーを恐れて目をつぶってきた。
今回、私はこのタブーの蓋を開けた。それは国のために必要だと確信したからだ。自ら省みて正しければ何も恐れることはない。私はこれからも何ら怯えることもなく、この道を進んでいく覚悟である。
「核の抑止力」を直視せよ!
私は、国防を語るときには具体性がなければならないと考える。「わが国はヒロシマ・ナガサキに原爆を投下させた唯一の被爆国である、従って核兵器には反対である」という抽象的な議論ではなく、わが国を再び核被爆国にしてはならないという観点から語るべきではないのか。
しからば、インド・パキスタンはいかなる動機で核兵器を保有するに至ったのかと言えば、それは明らかに第二のヒロシマ・ナガサキになりたくなかったからである。彼らが核兵器を持つに至ったのは、核兵器を他国を侵略するために使用するのではなく、自国に核兵器を落とさせないためにどうすべきかと、真剣に考えた末の結論であった。こうした両国の真剣な国防への取り組みに対して、わが国は単純に非難することだけでいいのだろうか。わが国は日米安保体制の下、アメリカの核の傘で守られていながら、「第二のヒロシマ・ナガサキになりたくない」として、核の抑止力を保持したインド・パキスタン両国を非難する資格があるのだろうか。
わが国はもちろん、核を廃絶する方向に進むべきではある。しかし現実には、わが国はアメリカの核の傘に入って、核の抑止力に国の安全を依存している。わが国は唯一の被爆国であり、ヒロシマ・ナガサキに続いて三発目の核が落ちるような事態は断固として防がねばならない。そこで、わが国は現実にはアメリカの核に傘に入り、アメリカの核の抑止力で、国家の安全を確保してきたのである。
しかし、日本の周辺を見れば、北朝鮮は昨年「東京を火の海にする」との国家声明を出し、隣国である中国は四十数回の核実験を実施している。しかも、中国の中距離弾道ミサイルの照準は日本に当てられていることを忘れてはならない。さらにインド・パキスタンも核を保有するに至ったのである。
わが国がアメリカの「核の抑止力」によって守られているとするならば、我々は自らを守る核の抑止力というものについて、国会で議論するのは当然のことである。自らを守っている核の抑止力を、見て見ぬふりをするようでは国防は成り立たない。
核兵器の問題だけではない。例えば、小銃一つとっても、また機関銃一つとっても、同様のことが言える。自らを守る小銃・機関銃を見て見ぬふりをして、訓練すらしなかったらどうなるか。自衛官は一人の国民の命すら守れないということになる。
防衛問題は具体的に語るべし
国防は抽象的に論じても分からない、極めて具体的に論じなければ理解し難いというのが、私の持論である。私はこうした観点から約二時間に亘って、『週刊プレイボーイ』誌との議論を進めたが、この中で、私が「強姦」という言葉を使ったことは不適切であり、私自身これを深く反省している。しかし、ユーゴスラビア・コソボで起きた「民族浄化」の実態は一体何だったのか?
国防というものの実態は、攻めてくる敵を撃破し、殺戮し、殲滅するという行為である。国防が破綻すれば、言葉で表現するのもはばかれるような事態が生じる。だからこそ、国防は具体的に論じなければならない。具体的なイメージをもって議論することによって初めて危機意識が芽生えるのだ。国防という具体的な行為を国際法上合法的にできるのが軍隊という存在だ。政府は自衛隊は軍隊ではないと強弁しているが、軍隊以外の主体が敵部隊と対処すれば国際法違反になる。したがって、自衛隊が敵部隊を排除することを命じられたら、自衛官が国際法違反の戦争犯罪人として裁判も受けずに殺されても、わが国は何一つ文句は言えないのである。
しかるに今回、私が問題提起した中で、その言葉の片言隻語を取り上げて、「女性蔑視発言だ」とマスコミは非難したのだ。だが私は一貫して国防を重要視し、女性を大切に考える体制を作るべきだと言っているのだ。それがなぜ、女性蔑視になるのか。私はこうした観点から、「国軍の創設こそ、政治家としてのライフワークだ」と言い続けてきたが、この信念は微動だにしていない。
「空気」に支配される日本

今回生じた事態は一体何だったのか。今回の問題提起は、ソクラテスの言う「議論の赴くところ、何処にも行こうではないか」という、言論の領域で処理できる問題であると私は考えた。私の立場は、自分に対する反論には反論をもって応え、同意すべきところには同意し、議論において出された結論に従おうというところだ。しかし今回の事態はこうした言論の領域ではなく、マスコミが私の問題提起そのこと自体を非難し、問題提起そのものを葬り去ろうとしたのである。マスコミの非難に、反論をもって応えることはできない状況だった。マスコミはこぞって、私という一人の人間をターゲットにして非難し、さらに非難を重ねることによって、非難の輪を広げようとしていた。
今回、私は『週刊プレイボーイ』誌上で、「核武装すべし」あるいは「非核三原則を撤廃せよ」と主張したのではない。「核の抑止力について国会で議論せよ」と問題提起したに過ぎない。もちろん私は、小渕内閣が非核三原則政策を揚げていることは承知していた。私は「非核三原則を撤廃せよ」と主張したのではなく、「核の抑止力」について国会で議論すべしと言ったに過ぎない。実際は、これまでの政府答弁では、わが国も核保有することは憲法上許されるとしてきた経緯がある。
しかも一方では、民主党の代表に選出された鳩山由紀夫氏が「徴兵制を導入せよ」と主張した。徴兵制は今の憲法解釈では明らかに違憲だ。しかし、マスコミは鳩山発言に対しては何の騒ぎも起こさなかった。
こうした状況を見ると、まさに山本七平氏の如き知性が再び現れて、『続・空気の研究』を書くべき課題であろうと、私は考える。この「空気」は政治とマスコミの関係に際立って現れる。
山本七平氏の書いた『空気の研究』は、日本社会が何らかの理由で非常に熱狂的になることがあることを研究した名著である。先の大戦で、戦艦大和は航空機の援護もなく出撃したが、当時の専門家には無謀だということは分かっていた。しかし当時の関係者は、異口同音に「その時の空気では、ああするより仕方なかった」という言葉を使って、当時の状況を振り返ろうとする。日本の現代史は常に、「その場の空気」という怪物によって形成されてきた。山本氏はこうした日本特有の現象を解明しようとしたのだ。
さて、この「空気」の影響は重大である。私を取材しようとした新聞記者が内閣総理大臣執務室、官房長官執務室のドアの向こうの廊下を埋め尽くした。防衛庁最高幹部の部屋周辺の廊下も同様だった。このため国防行政の一日の停滞をもたらした。仮に私が「あたりまえのことを言って、なぜ、辞任しなければならないのか」と言っていれば、防衛行政は数日間に亘って停滞したに違いない。だからこそ、私は自ら辞任することを決意したのだ。
防衛庁は危機に対処するための組織である。危機の本質とは、何時どこで何が起こるか分からないということなのである。米国のホワイトハウス、韓国の青瓦台を見るまでもなく、一国の最高指導者の執務室のドアのすぐ向こうに新聞記者が詰めかけるような国は、日本以外にはない。私が辞任に至る数日間、マスコミは山本氏の言う「空気」が支配していた。だから私は辞任を表明した記者会見で、「記者諸君は後になって、あの時なぜ熱に浮かされたように大騒ぎしたのか、その動機と自分の行動を説明できなくなりますよ」と申し上げたのだ。
今回、私は核問題というタブーの蓋を開けた。
再度述べるが、それは日本国のために必要だと確信したからである。核問題から眼を背けていては、国家の生存を守ることはできない。今こそ、タブーを打ち破らねばならないと考える。戦前、斎藤隆夫は反軍演説を行った。斎藤は当然のことを言ったのにもかかわらず、当時の議会は結局、賛成多数で斎藤を議員除名にしたという悲しい歴史がある。斎藤を議員除名にまで追い込んだのは、実は朝日新聞に代表されるマスコミであった。この事実を私は改めて強調しておきたい

西村防衛政務次官辞任の背景を探る
ピョンヤンの高笑いが聞こえてくる 編集部

西村防衛政務次官は、十月十九日発売の『週刊プレーボーイ』誌上のインタビューで、「核武装」発言をしたとして、朝日新聞を中心とするマスコミの総攻撃にあって辞任した。このインタビューの背後で蠢いた「西村追い落とし工作」を探る。
まず、西村代議士は防衛政務次官就任後、朝日新聞の若手記者から「西村防衛次官は日本のためにならないから潰せ、と上司から指示を受けている。あなたの今までの発言、著作を洗っている」と直接言われている。細川政権を作るために自由党攻撃を行えと指示したテレビ朝日の椿発言を思わせる戦宣布告である。実際の攻撃は朝日新聞ではなく、『週刊プレーボーイ』という軟派系メディアを使って搦め手からやってきた。大川興業総裁・大川豊というお笑いタレントをインタビューに、リラックスした雰囲気の中で、再三再四「個人的見解でいいですから」と二時間にわたって西村政務次官に国防論を述べさせた。その片言隻語を捕らえさせてセンセーショナルな誌面を作るのは簡単なことである。
出版社の集英社の幹部は、「現場が勝手にやってこんな騒動になり驚いている」と述べている。幹部、編集長には詳細を一切知らせずに大川並びに編集担当者(外部スタッフを含め)が、何らかの勢力の差し金で西村次官追い落としのために罠を仕掛けたのだ。『週刊プレーボーイ』という、通常であれば朝日やNHKが取り上げない男性誌の内容を、発売と同時に待ってましたとばかりに大々的に報道し、辞任への空気を盛り上げていった手口は綿密な連係プレイがあってこそである。
しかし、朝日やNHKは独自の判断で西村追い落としに血道を上げたわけではない。ある勢力の指示を受けていたことが、本事件に関わった二人の人物から浮かび上がってくる。
西村政務次官にインタビューをした大川豊なるお笑いタレントは何者なのか。大川は『新井将敬を殺したのは誰か』(太田出版)という、きわめて政治的な著作の出版や、少なくとも二度にわたる北朝鮮への入国歴など、単なるお笑いタレントとは言えない側面を持つ人物である。大川興業は北朝鮮からの帰国報告会を、新宿歌舞伎町のアウトロー討論酒場「ロフトプラスワン」で行っている。この「ロフトプラスワン」は赤軍派の元議長塩見孝夫を始め、よど号事件関係者など北朝鮮に縁の深い政治運動家が多数演出するトークライブスポットであり、左右両翼の活動家の溜まり場となっている。大川は北朝鮮の各地を訪問し、撮影をして帰国している。国交のない北朝鮮に入国し、撮影をして歩く、ということは、明らかに北当局の強い支援と協力が無ければ出来ないことであることは小学生でも分かる理屈である。
もう一人怪しい人物がいる。社民党の辻元清美という女性代議士が、十月二十日、西村次官が首相官邸に出向かいた際、「強姦発言は私に向けられたもので抗議する」と官邸入り口で待ちかまえていたシーンをテレビで報じていたのをご記憶の方も多いだろう。辻元はピースボートという環境団体の設立者で、平成八年に社民党近畿比例ブロックから衆議院議員に当選している。この辻元ときわめて親しい関係にあり、その上位命令者ではないかとさえ言われる左翼系出版社経営者に北川某は、かつて赤軍派に所属していた。昭和四十九年、パリで赤軍派会議が開催された際、北川はフランス公安当局に拘束され、国外退去処分を受けている。その後、三多摩地区でパレスチナと連帯する会などで活動し、北朝鮮への渡航歴は公式に確認されただけで二回である。このように、今回の辞任劇の背後には北朝鮮の濃厚な臭いが感じられる。
では、なぜ北朝鮮は西村眞悟代議士をそれほど恐れるのか。貧困と飢餓にあえぐ北朝鮮にとって喫緊の課題は資金導入である。現在、日本国内で経営破綻した朝銀(信用組合)へ金融安定化のための公的資金一兆円が国民の知らないところで導入されようとしている。これに対し最も強硬に反対を唱えているのが西村代議士である。『週刊文春』誌上で反対論をぶち上げたこともある。もう一つ、金丸訪朝以来の懸案である日本の北朝鮮に対する戦後賠償金の問題がある。九月十七日アメリカと北朝鮮が経済制裁解除と引き替えに、テポドン打ち上げを当面停止することで合意したというペリー合意が発表された。このペリー合意には密約があったといわれている。それは、テポドンの中東アラブ諸国への輸出断念の見返りに、アメリカが日本に強要して戦後賠償金として百億ドル(一兆円強)を北朝鮮に支払わせる、というものである。アメリカは腹を痛めず、北にいい顔が出来るという、日本をダシにした帝国主義外交だった。
横田めぐみさんを拉致、ミサイルと核で日本威嚇を続ける北朝鮮になぜ巨額の血税を貢がなければならないのか。政務次官として政府に入った西村議員が、当然のこととして反論を唱えることは火を見るより明らかであった。
村山元首相と野中幹事長代理が、戦後賠償金問題と国交正常化交渉で訪朝すると北朝鮮紙『朝鮮新報』が報じている。金丸に訪朝後、金の延べ棒が贈呈されたという噂がながれたことがあった。朝銀への一兆円、戦後賠償金百億ドル、併せて二兆円強の我々国民の税金が闇に消えていく。そしてそれを強力に推進する政治家たちという犯罪的な構図が明らかになりつつある。西村辞任報道の中で、確信犯・朝日新聞のほかにNHKが公営放送と言う看板をかなぐり捨てて、突出した報道を繰り返したのは異様だった。NHKの生殺与奪の権を握るのは郵政省である。郵政族のドンは言わずと知れた野中広務自由党幹事長代理である。
西村眞悟防衛政務次官の辞任劇から、ピョンヤンの高笑いが聞こえてくる。

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