「動物園のゾウは野生に比べて短命」との分析を、英国やケニアなどの研究チームがまとめ、12日付の米科学誌サイエンスに発表した。飼育されている動物は管理が行き届いて野生より寿命が長い傾向があるが、ゾウは逆だった。ゾウは神経質でストレスに弱いとされる。動物園への搬送や狭い場所での生活が短命を招いている恐れがあるという。
調査対象はアフリカゾウとアジアゾウの計約4500頭。欧州の動物園のゾウと、ケニアの国立公園やミャンマーで放し飼いされている野生に近いゾウの寿命などを比べた。
繁殖にかかわるメスを分析したところ、動物園生まれのアフリカゾウの寿命が16・9年だったのに対し、野生は56・0年だった。アジアゾウは動物園生まれが18・9年、放し飼いは41・7年だった。また、アフリカゾウの大人のメスの死ぬ確率は動物園の方が野生より2・8倍高く、アジアゾウの妊娠率は動物園生まれの方が放し飼いのほぼ半分だった。
野生ゾウの行動範囲は数百キロに及ぶと言われる。研究チームは「閉鎖空間がストレスとなって、母性の喪失や短命につながりかねない肥満を招く。動物園への新たな搬入をやめ、動物園のゾウが抱える問題を把握すべきだ」と訴える。【永山悦子】
毎日新聞 2008年12月12日 東京夕刊