先週の金曜日(5日)、「ほーっ、なるほど」という気になるニュースに接しました。EXでは6日付の「NEWS24」で報じた、麻生太郎首相(写真右、68)と共産党の志位和夫委員長(写真左、54)との会談です。自民党総裁である首相と共産党トップとの個別会談は極めて異例で、「歴史的」と形容しても大げさではない自・共党首会談でした。
公式には、雇用問題で麻生首相に申し入れを行うために共産党側が会談を持ちかけて実現したということになっていますが、底流にあって会談実現を後押ししたのは、水面下で阿吽の呼吸で進んでいる「自・共選挙協力」とみて間違いありません。
自民党は来週にも、国政選挙の立候補者が支払う供託金の額を引き下げることを軸とした公選法改正案を、今国会に提出する方針です。供託金制度の趣旨は売名行為の泡沫候補の乱立防止にありますが、改正案の具体的ポイントは、①供託金を衆院選選挙区では300万円から200万円に、比例代表では600万円から400万円に減額する②供託金没収となる得票数の基準も、選挙区の場合「有効投票数の10分の1」から「20分の1」に引き下げる-の2点です。
なぜ自民党はこのように公選法を改正しようとするのか? それは取りも直さず、共産党に300の小選挙区すべてに候補者を立てて欲しいからです。当落よりも「選挙戦そのものが最大の政治活動」というスタンスの共産党は、中選挙区時代も含めて原則としてすべての選挙区で公認候補を立ててきました。そして、中選挙区時代は大都市部で当選者を出せたので状況は悪くなかったのですが、小選挙区になってからは悲惨でした。小選挙区移行後の過去4回(平成8、12、15、17年)の衆院選では、8年こそ選挙区で2人の当選者を出しましたが、その後は当選者ゼロが3回続いています。こうなると供託金の没収金額もうなぎ上りで、前回は223人が対象となり、小選挙区分だけで6億6900万円も国庫に巻き上げられてしまったのです。
さすがにこうなると財政的理由もあって共産党は原則を曲げざるをえず、昨年9月の第5回総会で「次期衆院選では比例代表に重点を置き、小選挙区での候補者は140人前後にとどめる」との方針を決めたのでした。この決定にあわてたのが、自民党です。というのも、選挙区に共産党候補がいない場合は、比例代表で「共産党」と書いた共産党支持者のうち圧倒的多数が、選挙区では民主党候補に投票すると分析されているからです。
共産党の基礎票は全国で400~500万。1選挙区平均では1~2万票ですが、共産党候補がいたおかげで命拾い(辛うじて当選)できた自民党議員はかなりの数に上ります。元々、諸外国と比べて日本の供託金は高すぎるという批判はあったのですが、これまで自民党は対応してきませんでした。それが、共産党の方針転換と呼応するかのように公選法の改正案を用意したのですから、この改正案の真の狙いが何であるかは明白です。
極めて党利党略の発想を内包した改正案ですが、自民、公明の与党に加え、背に腹は替えられない共産、社民(前回衆院選では22人が供託金没収)など野党の一部も、賛成に回る見込みです。頑強に反対する民主党が主導権を握る参院での審議は難航しそうですが、成立を視野に、共産党とパイプを持つ自民党議員たち(表に出ないだけでけっこういるものです)はすでに、全選挙区立候補への誘い水を共産党に向けています。
改正案が成立すれば、供託金没収のハードルは劇的に下がり、共産党は小選挙区で候補者を絞る理由がほとんどなくなります。その場合、自民党のもくろみ通りに共産党が応じるのか、大いに注目されます。
共産党候補は結果として自民党候補の当選を助け、自民党は「くまなく選挙戦を戦い抜く」という共産党の原理原則遂行に手を貸す。このような形を変えた「選挙協力」を共産党と行わねばならないほど、今の自民党の足腰は弱っているのです。解散のタイミングを完全に逸してしまった麻生首相にとって、残された道は任期満了を迎えるか「ヤケクソ解散」しかありません。そして、どの道、自民党解党、政界再編は避けて通れないでしょう。(佐渡勝美/12月5日、国会(酒巻俊介撮影))
by タブロイド紙SANK…
【EX STAFF ROOM】「まだはも…