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H先生
原子力発電所の災害評価についての記事の感想ですが、結果は、計算条件によって、数桁も変わるため、著者の立場からすれば、最も厳しい(あるいは、最も厳しいと思われる)条件での結果を記したいのでしょうが、世の中を相手にする場合には、自身の考え方や哲学だけではなく、学問や情報の客観性からして、(1)発生確率を推定しておくこと(取り上げている事象の発生確率は10のマイナス8乗オーダーと推定されます)、(2)計算条件における個々の不確実性を明記しておくこと、(3)評価結果の最小値・平均値・最大値を明記しておくこと等が不可欠であるように思えます。
災害評価ですから、最も厳しい結果を示し、原子力政策や原子力災害対策に生かしてもらいたいのでしょうが、ただ、それだけではなく、もう少し、客観的視点が必要かもしれません。評価手段は、妥当であり、問題は、評価の考え方、分かりやすく言えば、計算条件だけだと受け止めています。
桜井淳
T先生
12月第二週の1週間、モスクワ訪問とのこと、ついでに元クルチャトフ研の研究者で、チェルノブイリ石棺に入り浸りになって、積算20Svも浴びているというCheCherovさん(「炉心が空中に浮いて爆発した」という説の提唱者のひとり)に会うとのこと、継続的な努力に、心より敬意を表します。
私は、機会がないために、モスクワには、もう、10年も行っていません。モスクワ郊外にあるクルチャトフ研究所は、歴史があり、核融合のトカマク方式等、数々の世界的業績を上げた世界的原子力研究所であり、私は、バラック建てのプラズマ研究棟の中に設置されていた世界で最初に超電導磁石を採用したトカマク試験装置T-15の上に乗り、背広を着たまま、真空容器の中に入ったこともあります。
「積算20Svも浴びている」ということですが、当然、全身被ばくでしょうから、無事でいられるのが不思議なくらいです。実に怖い世界の出来事です。
チェルノブイリ4号機反応度事故には、まだ、まったく分からないことが多く、たとえば、本当の印加反応度や炉心破壊のメカニズム等、中には、「炉心が空中に浮いて爆発した」という説もあり、そのエネルギーが何なのか、非常に興味ある問題です。
「原安協だより」(No.150(1996.2.25))には、「過度時の急激な熱サイクルによって複数の圧力管の下部溶接部が破損し、中の水のジェット噴射によって原子炉全体が10m以上も飛び上がった(Nucl.News, p.18, May(1995))」と記載されていますが、ジェット噴射での説明では、無理があります。「炉心が空中に浮いて爆発した」という説の物理的根拠が知りたいものです。
帰国後、ぜひ、新たな情報をお聞かせください。
桜井淳