Jリーグは春開幕か秋開幕か
【戸塚啓】2008年10月31日
Jリーグが「秋-春制」への移行検討を始めているという。そこにはメリットとデメリットがあり、デメリットを内包したメリットやその逆もある。それだけに、「これがメリットで、こっちがデメリット」と、はっきり区別できないところがある。
一般的なメリットとしてあげられるのは、ヨーロッパのシーズンと歩調を合わせることで、日本人選手の移籍や外国人選手の獲得がスムーズになるということだ。
日本人選手がヨーロッパへ移籍する場合、ヨーロッパのプレシーズン(6~7月)か冬の移籍マーケットを使うになる。シーズン開幕前のキャンプから新チームに合流できるプレシーズンの移籍が理想だが、選手を放出するJクラブにとってはダメージが大きい。海外へ移籍する選手は主力クラスだから、簡単に埋められない穴がシーズン中に空いてしまう。特徴的なケースは、今年7月にフッキがFCポルトへ移籍した東京ヴェルディだろう。
Jリーグ終了後の冬の移籍は、選手の負担が大きい。新天地に順応する時間が短いからだ。Jリーグ終了とともにヨーロッパのリーグへ飛び込んでいくことで、オフが削られてしまうデメリットも生じる。
ドイツのようにウインターブレイクのあるリーグならいいが、イタリア、イングランド、スペインなどはシーズンの真っ只中だ。助走期間はない。冬の移籍選手は即戦力としての期待が大きいから、すぐに結果を求められるところもある。
日本代表の強化を最優先するのであれば、「秋-春制」のほうがいい。
今年2月にワールドカップ3次予選の初戦が、来年2月にもワールドカップ最終予選のオーストラリア戦が組まれているように、2月や3月は国際Aマッチデイの開催時期だ。必然的に代表選手は始動が早くなり、シーズンの切れ目がほとんどないなかで稼働している。
今年1月の指宿キャンプでは、選手によってコンディションにかなりのバラつきがあった。オフ明けでほとんどボールに触っていなかったという選手がいて、すぐにでも実戦的な練習へ移れる選手がいた。
「秋-春制」へ移行すれば、こうしたコンディションのバラつきは抑えられる。オフ明けの選手たちを、急ピッチで仕上げていく必要はなくなるはずだ。
一方、「秋-春制」の実現への障害となるのは、天候がもたらす地域格差だろう。
降雪地をホームタウンとするクラブは、ホームゲームの開催に様々な困難が生じる。試合当日が雪ともなれば、観客の足並みは確実に鈍る。観客動員に影響が及び、入場料収入に響く。クラブにとっては死活問題だ。
ならば、「夏-春制」はどうだろう。
観客動員の見込める8月に開幕し、12月中旬でリーグ戦を中断する。天皇杯は現行のまま開催し、1月中旬あたりまでリーグ戦を行なう。高校選手権と重ならず、かつ雪の影響を受けないようにすることを考えると、1月のリーグ戦は2試合程度が現実的だろうか。
その後はリーグ戦を中断してウインターブレイクとし、2月下旬から3月上旬に再開する。このカレンダーなら、代表チームはまとまった準備期間を確保でき、2月の国際試合にも無理なく対応できるはずだ。
現行の「春-冬」か、それとも「秋-春」かの議論であれば、ヨーロッパのなかでも開幕の早いフランスやイングランドのような「夏-春」がベターというのが個人的な意見である。夏休みからスタートしてゴールデンウィークで幕を閉じれば、観客動員の極端な落ち込みも避けられるだろう。
問題はACLか。今年のグループステージは、5月21日か22日が最終節だった。「秋-春」でも「夏-春」でも、Jリーグの終盤と重なってしまうことになる。国内外のすべてのゲームがスムーズに運ぶ日程は、果たして成立するのだろうか。どのようなスケジュールになっても、どこかのクラブに負担を強いることになってしまうのか。今後もこのテーマについて考えてみたい。(戸塚啓=スポーツライター)