秋春制なら、財源は?
【西部謙司】2008年11月05日

 消費税の話をすると選挙に負けるという。日本サッカー協会の犬飼基昭会長は、Jリーグの秋春制導入をタブー視しない姿勢を打ち出し、すでに本格的な検討に入っている。ただ、もし秋春制に踏み切るとしたら、お金が必要である。

 8月にフランスへ行ったとき、サンテチエンヌの育成所を見る機会があった。芝生のピッチがざっと4面、立派な宿舎もある。屋根付きのグラウンドもあった。天然芝のはるか上方に屋根がある。Jリーグが秋春制を導入するなら、おそらくこういう施設が必要になるのだろうなと思った。

 リーグ戦が秋に始まって春に終わるとなれば、当然冬に試合をやることになる。前回、戸塚さんが書いておられたように、ウインターブレイクを入れるとしても寒い時期の開催は避けられない。問題は、日本の冬は雪が降ることだ。

 屋根付きの練習場が必要で、それも1つでは足らない。そもそもサンテチエンヌで見たような屋根が、日本の積雪に耐えられるものかどうかも疑わしい。ヨーロッパはそれほど雪が降らない。むしろ地面の凍結が問題で、イングランドでは練習グラウンドにも凍結防止のヒーティングシステムを使っている。日本は雪と凍結の両面で対策が必要になりそうだ。

 北のチームは冬場にホームゲームをやらず、集中的にアウェーを組む方法もあるが、それにしても練習場は必要だ。また、冬にアウェーが重なるということは、別の季節にホームが連戦になる。ACLに出場すれば週2回開催が続くかもしれない。芝生がそれに耐えられるのか。プレーする側だけでなく、観客への配慮も必要だ。寒さで観客動員が落ちる懸念は十分あり、スタジアムの暖房設備もいるだろう。

 そうすると、ドームスタジアムと人工芝の導入+新たな練習施設ぐらいは必要になりそうだ。では、その費用はどうするのか。クラブの負担ではとうてい無理だ。秋春制導入は、財源とセットでなければ語れない。(西部謙司=スポーツライター)

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