自由に通行できる場所で明確な動機なしに、無関係の人を殺傷する「通り魔殺人事件」は今年に入って9日までに全国で14件発生し、死傷者が43人にのぼったことが11日、警察庁のまとめで分かった。件数、死傷者数ともに過去最悪となった。刑法犯全体の認知件数は6年続けて減少したが、殺人事件(未遂を含む)は戦後最少だった07年同期より約7%増えた。
同庁は93年から通り魔殺人事件を集計している。今年に入っての死傷者43人のうち死者は11人で、これも過去最多だった。都道府県別では東京6件、茨城2件、北海道、千葉、岐阜、三重、福井、岡山が各1件。
6月、東京・秋葉原の歩行者天国で派遣社員だった男がトラックで雑踏に突っ込み、ナイフを振り回して7人が死亡、10人が負傷。3月にも茨城県土浦市のJR荒川沖駅で無職の男が通行人ら8人を刃物で殺傷した。この2日後には、岡山市のJR岡山駅で無職の少年が岡山県職員の男性を線路に突き落として殺害する事件が起きた。
死者数では、東京・池袋で8人が死傷した事件や、山口県下関市のJR下関駅で男が乗用車で通行人をはねたうえ、包丁で次々に襲って15人が死傷した事件が発生した99年(7人)を上回った。これまで件数と死傷者数で多かったのは96年の11件、32人だった。
刑法犯全体の認知件数は、11月末までで約5%減の約167万件。殺人、強盗、放火など重要犯罪のうち唯一増えた殺人は1200件だった。
殺人容疑者の年代別では、65歳以上が約44%増の158人と増加が目立った。このうち配偶者が被害者となるケースが66件を占めた。(野田一郎)