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2008年12月12日

◎新幹線部分着工案 成果ゼロより次善の策が妥当

 整備新幹線の延伸論議で、与党が北陸新幹線金沢―福井などの部分着工を求める方針を 固めたのは妥当であろう。必要な財源を確保する見通しが立っていない以上、すべての区間の同時整備にこだわり過ぎて成果ゼロで終わるのは得策とは言えず、より現実的な次善の策を探るのは当然である。この「部分着工案」で政府の合意を取り付け、来年度政府予算に建設費を盛り込むために、与党にはもう一押しを求めておきたい。

 延伸の検討対象となっていたのは、北陸の金沢―敦賀、北海道の新函館―札幌、九州・ 長崎ルートの諫早―長崎の三区間。与党の部分着工案では、このうち金沢―福井と札幌―長万部、長崎駅の整備を来年度からスタートさせるとしている。さらに、将来の延伸を担保するために敦賀駅を先行整備すること、札幌―長万部をスーパー特急方式にして建設費を抑えることなども検討されている。

 私たちはこれまで、財源が限られるのならば部分着工もやむを得ず、北陸では整備効果 の大きい金沢―福井を優先的に着工するのが現実的と主張してきた。金沢―敦賀の同時着工を至上命題として要望活動などを展開してきた福井県関係者にとっては、部分着工案は不本意であろうが、沿線自治体はこれまでも「妥協」を繰り返しながら、少しずつレールを延ばしてきたのである。与党案に敦賀駅の整備も盛り込まれるとすれば、先の見通しもそれほど暗くはないのではないか。

 ただ、現時点では、部分着工案でも財源が十分に確保できているとは言えない状況であ り、与党内では、新幹線施設の貸付料六千億円に加え、工期を「おおむね十年程度とする」とした〇四年末の政府・与党申し合わせを見直し、工期を延長して財源を工面する案も出ている。他に手がなければ、それも一つの選択肢だろう。

 もちろん、着工する以上は可能な限り早く完成させ、早く効果を発揮させる方が望まし いのは言うまでもない。与党は、今後も休まずに新たな財源についての議論を続け、開業時期の前倒しを目指してもらいたい。

◎天皇陛下の公務 大幅な削減が必要では

 不整脈との診断で、しばらく静養されていた天皇陛下が公務に復帰された。宮内庁によ れば、不整脈は既に落ち着いたが、胃と十二指腸に炎症が見られたという。精神的、肉体的ストレスが原因との診断である。

 陛下は今月二十三日に七十五歳の誕生日をお迎えになる。お年を考えると、公務が多過 ぎる。陛下の公務は昨年より今年の方がむしろ多くなっているとの指摘がある。陛下ご自身の意向もあろうが、医師の意見を聞いて公務を大幅に減らす必要があるのではないか。

 公務の負担軽減は、かねてからの宮内庁の懸案だった。主な公務は、国会の召集や法律 、条約の公布、栄典の授与など署名、押印を求められる書類だけで年間千件、宮殿での拝謁(はいえつ)、ご会見、晩餐(ばんさん)などは年間二百回、二〇〇七年に会った外国からの要人は七十一人に及ぶ。このほか、全国植樹祭や国体、海づくり大会への出席や地方行幸があり、多くの宮中祭祀(さいし)もこなさなくてはならない。

 両陛下の公務の一部は、皇太子をはじめとする皇族に振り分けることも可能だろうが、 多忙なのは皇室全般について言えることである。秋篠宮殿下は先月末の会見で、公務分担について質問を受けられた際、既に多くの公務を皇太子殿下やご自身がお受けになっていて、これ以上の分担は難しいとの見解を示された。天皇陛下の負担を軽減するには、やはり過大な公務そのものをばっさり削るしかないのである。

 たとえば、日本から外国に派遣される大使夫妻について、赴任前と帰朝後に一人ひとり とお会いになられているが、こうした拝謁をやめるだけでも負担は減る。宮内庁は医師の意見を最優先して、公務を大胆に見直してほしい。

 むろん、陛下の心労は、公務を減らしただけでは解決しないかもしれない。皇太子妃雅 子さまが長い療養を続けられていること、「お世継ぎ」を含めた皇室の将来などが陛下の心理的負担になっていることは容易に推測される。だからこそ、せめてお体をいたわる十分な時間を提供して差し上げたいと思うのである。


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