政府は、派遣ら非正規労働者の支援などを強化する新たな雇用対策を取りまとめた。自民、公明両党の提言を受け、企業によるリストラが相次ぐ非正規労働者らの雇用維持策や再就職支援策、学生らの採用内定取り消し対策が柱となっている。
再就職支援では、職を失った非正規労働者らを対象に、自治体が一時的な雇用機会を創出する事業を導入する。必要な財源千五百億円は二〇〇八年度第二次補正予算案に盛り込む方針だが、第二次補正予算案は、来年一月五日召集予定の通常国会に提出され、審議が始まるのはそれからだ。これでは遅いと言わざるを得ない。
雇用維持策では、派遣労働者の正社員化を支援するほか、雇用調整助成金の対象者を拡大する。採用内定取り消し対策では、内定を取り消された学生を採用した企業に奨励金を支給する。いずれの対策も予算の裏付けが欠かせない。
一方で、派遣社員らの契約の打ち切りが、ここにきて相次いでいる。厚生労働省によると、来年三月末までに非正規労働者約三万人が職を失うとみられているが、既に自動車や電機など大手製造業では契約を更新しなかったり、中途解約が現場で行われている。会社の寮からも退去を迫られ、年越しに不安を募らせている人が日に日に増えている。景気の先行き不透明感から、来春採用の学生の内定を取り消す企業も目立つ。年明けから予算案審議などと悠長に構えてはいられないはずだ。
ところが、国会が開会中にもかかわらず、政治が目前の問題解決に向けて機能しているとはとても言えない。対策では今後三年間で二兆円規模、百四十万人の雇用下支えを図るとしているが、来るべき衆院総選挙を意識した大盤振る舞いにしか見えない。それも今のままでは空手形でしかない。
厚労省は、派遣・契約社員らを社員寮などから退去させず、無償で貸与した企業に一人当たり月六万円程度を助成する制度を創設することを打ち出した。当面の急場をしのぐため、こうした緊急の対策が求められる。日銀も金融政策の面からもっと目配りをして、企業の雇用を支援してほしい。
民主党など野党は政局にらみで、反対ばかりしている場合ではない。予算や法律など与野党で協議し、国会として早急に手当てを打つことが必要だ。会期末の二十五日までに間に合わないなら、再度会期延長してでも緊急対策を講じるべきだ。
国際教育到達度評価学会が、小学四年、中学二年を対象にした二〇〇七年国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)の結果を公表した。
日本は、小学四年が算数、理科とも参加三十六の国・地域中で四位、中学二年では四十八の国・地域中、数学が五位、理科は三位だった。〇三年の前回調査とほぼ横ばいで上位をキープ、中二の理科は六位から順位を上げた。
文部科学省は「学力低下傾向に歯止めがかかった」と評価しているが、そう言い切るのは早計ではないか。
TIMSSの設問は基礎知識を重視する内容になっているのが特徴で、詰め込み型の学力を反映しやすい。知識の活用力をみる経済協力開発機構の〇六年の学習到達度調査では日本の順位は低下しており、応用力をいかに育てていくかが課題になっている。
今回の調査で気がかりなのは、むしろ学習意欲の問題だ。中学二年の意識調査で「勉強が楽しい」としたのは、数学40%、理科59%で、国際平均より19―27ポイントも低い。小学四年では算数70%、理科87%と改善が見られるものの、中学へ進むにつれて勉強嫌いになる深刻な実態が裏付けられたといえよう。
文科省は、「ゆとり教育」から路線転換した小中学校の新学習指導要領を、理数を中心に来春から一部前倒しして実施する。しかし、授業時間が増えても、学習意欲が低いままでは「詰め込み教育」への逆戻りにすぎなくなろう。
理数離れの子どもの興味、関心をいかにして引き出すか。授業で日常生活への応用を重視したり、実験や観察を増やすのはもとより、企業の力を取り入れるなど、学校現場の地道な努力と工夫が一層求められる。
(2008年12月11日掲載)