長崎市立市民病院と日赤長崎原爆病院との統合を県が提示した問題で、市の「新市立病院建設検討プロジェクトチーム(PT)」(総括者=高比良実・市企画理事)は10日、県内の被爆者5団体の代表らから統合案に対する意見聞き取りを始めた。【下原知広、宮下正己】
長崎原爆被災者協議会では、高比良理事らが谷口稜曄(すみてる)会長と山田拓民事務局長に、県側から統合案が提示された経緯などを説明した。
谷口会長は「浦上に住む被爆者は多い。原爆病院が統合で遠距離に移転すれば、交通手段や診察待ち時間などはどうなるのか。県は利用者のことをどこまで考えているのか」と疑問を呈した。
山田事務局長は「原爆病院自体の方針が見えず不安。県の計画には『被爆者はいずれ消えてしまう』という考えがあるのではないか。構想を出すなら被爆者に説明があってしかるべきだ」と話した。
同市PTでは今後も継続して被爆者からの意見を聞き、来年1月中ごろまでに県と協議して、統合案の実現性を検証する。
一方、県も10日、長崎市立市民病院と日赤長崎原爆病院の統合に関する庁内の検討会を設置し、初会合を開いた。統合病院実現に向け、長崎市のPTからの疑問点や問題点に即座に答えられるよう理論武装する。
検討会は、矢野右人・県病院事業管理者をトップに部課長級10人で構成。県の統合病院案に関する(1)機能の妥当性(2)経営シミュレーションの妥当性(3)運営方法(4)建設用地買収方法--の細部を詰める考え。
〔長崎版〕
毎日新聞 2008年12月11日 地方版