桜井淳所長から京大原子炉実験所のT先生への手紙-「炉心が空中に浮いて爆発した」って-
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12月第二週の1週間、モスクワ訪問とのこと、ついでに元クルチャトフ研の研究者で、チェルノブイリ石棺に入り浸りになって、積算20Svも浴びているというCheCherovさん(「炉心が空中に浮いて爆発した」という説の提唱者のひとり)に会うとのこと、継続的な努力に、心より敬意を表します。
私は、機会がないために、モスクワには、もう、10年も行っていません。モスクワ郊外にあるクルチャトフ研究所は、歴史があり、核融合のトカマク方式等、数々の世界的業績を上げた世界的原子力研究所であり、私は、バラック建てのプラズマ研究棟の中に設置されていた世界で最初に超電導磁石を採用したトカマク試験装置T-15の上に乗り、背広を着たまま、真空容器の中に入ったこともあります。
「積算20Svも浴びている」ということですが、当然、全身被ばくでしょうから、無事でいられるのが不思議なくらいです。実に怖い世界の出来事です。
チェルノブイリ4号機反応度事故には、まだ、まったく分からないことが多く、たとえば、本当の印加反応度や炉心破壊のメカニズム等、中には、「炉心が空中に浮いて爆発した」という説もあり、そのエネルギーが何なのか、非常に興味ある問題です。
「原安協だより」(No.150(1996.2.25))には、「過度時の急激な熱サイクルによって複数の圧力管の下部溶接部が破損し、中の水のジェット噴射によって原子炉全体が10m以上も飛び上がった(Nucl.News, p.18, May(1995))」と記載されていますが、ジェット噴射での説明では、無理があります。「炉心が空中に浮いて爆発した」という説の物理的根拠が知りたいものです。
帰国後、ぜひ、新たな情報をお聞かせください。
桜井淳