弘前市立病院(松川昌勝院長)の内科外来で今年5月、同市の80代女性患者が胃に挿入したチューブ交換の処置を受けた後、腹膜炎などを起こして亡くなっていたことが10日、分かった。同病院は遺族に慰謝料として1200万円の損害賠償金を支払うことで同意を得ており、市議会12月定例会の議決後、示談書を締結する。
 同日、市立病院の松川院長らが記者会見を開いて明らかにした。それによると、女性は口から食事を取ることができなくなり2006年11月、同病院で胃にチューブを挿入するための処置を受けた。
 この後は定期的にチューブ交換を行っており、今年5月28日には3回目のチューブ交換を行った。女性は入所していたグループホームに帰宅したが、顔色が悪いことから翌日、市内の別の病院を受診。ショック状態を起こしていたため市立病院に運ばれ緊急手術を受けた。
 しかし女性は集中治療室でショック状態から回復できず、同月30日午前2時すぎ、死亡した。
 原因について松川院長は「チューブの先端が胃の外側に貫通したと見られ、流動食が胃の外側に漏れたことで腹膜炎を起こしたため」と説明。
 チューブを交換した医師は内科経験10年以上の男性医師で、治療後、チューブが胃に正常に入っていることを確認したという。
 病院側は女性の家族に処置経過を説明、弘前警察署に通報した上で過失などが認められなかったことから医療事故と判断した。松川院長は「医師の責任はないと考えている」と述べ、医療ミスにあたらないとの考えを示した。
 病院ではチューブ交換のマニュアルを再確認するなどして事故防止に努める方針で、松川院長は「誠に申し訳なく、遺族の方々に深くおわび申し上げる」と陳謝した。
 病院側は医療事故について、保険会社と相談した上で慰謝料を支払うことで11月末に遺族と同意書を交わしている。市は11日、市議会12月定例会に損害賠償額の決定について追加提案する。
【写真説明】記者会見で医療事故について陳謝する松川院長(中央)ら